新世代の登場によりシーンにバリエーションが!
さらに、小田原ラーメンシーンを語る上で見逃せないのが、新世代の台頭だ。冒頭で述べたとおり、都心と近接しているという地の利を活かし、近年、一都三県大都市圏のラーメン店が有するノウハウを採り入れた店舗が続々と開業。これらの店舗の登場により、市内で食べられるラーメンのバリエーションが格段に広がった。
そんな新進店舗の代表的存在のひとつが、「らぁ麺 桃の屋」だ。店主は、新宿御苑の人気店「小麦と肉 桃の木」の初代店長その人。緻密な温度管理と素材選定を重ねた清湯スープは、修業元で会得したギミックを随所に織り込みつつも、過度に技巧に走らず、地域へと溶け込むバランス感覚を備える。
「中華そば 馨」もまた、同市のラーメンシーンの“今”を体現する店のひとつだ。出汁の重ね方など、大都市圏のラーメン店の味づくりに共通する点も見受けられるが、仕上がりは地域の味覚に密に寄り添ったものだ。
これら2軒のほかにも、「鯵壱北條。」や「NIBOSHIST」など、小田原には首都圏との緊密な接続を感じさせる店舗が数多く存在。小田原ラーメンシーンの受容力の高さを如実に物語っている。
以上を踏まえると、小田原のラーメンシーンは驚くほど多様であることが分かる。「味の大西」を起点とする「小田原系ラーメン」という基盤、「ブッダガヤ」に象徴される外部文化の受容、「中華 四川」に代表される独創的な味覚、そして、一都三県大都市圏の系譜に連なるコンテンポラリーなラーメン群。複数の文脈が1カ所に集い、共存することで、厚みと深みを持ったラーメン文化が形成されている。
小田原を訪れる際にはぜひ時間に余裕を持ち、このような文脈を意識しながら各店舗を巡り歩いていただきたい。各々の店舗が繰り出す1杯の背後にある、土地の歴史、店主の来歴、地域の嗜好を読み解くことで、ラーメンは単なる食事を超え、街そのものを理解する一助となるだろう。
今回はそんな小田原のラーメン店の中から、お薦めの4軒を紹介したい。具体的には、私が訪れた最近の店舗の中で、特に印象深い輝きを放った4軒を取り上げる。確かに東京から小田原までの距離は近い。しかし、その気軽さの中に潜む微かな「旅」の余韻を掴むことで、1杯との出逢いが一層記憶に残るものへと昇華される。
ぜひ、小田原という街が内包する滋味の奥深さを心ゆくまで味わい尽くしてもらいたい。
4/7