小田原のラーメンシーンを握るカギは「系譜」と「地域適応」
まず、小田原ラーメンシーンの輪郭を把握する上で最も重要なのが、「系譜」と「地域適応」という2本の柱だ。
「系譜」の中核を成すのが、「小田原系ラーメン」だ。源流は、湯河原町に本店を構える「味の大西」が作り上げた1杯にまで遡る。野趣味豊かな豚骨出汁に濃口醤油を重ねたスープに芳醇なラード油を注ぎ込み、平打ち縮れ麺、巨大なワンタン、厚切りのチャーシューを豪快に盛り付けた「チャーシューワンタンメン」は、「小田原系」の代名詞的存在だが、その威容たるや、まさに武骨のひと言に尽きる。
食べ始めから食べ終わりまで、暴力的なうま味が味蕾を叩き続ける類まれな個性が絶大な支持を獲得し、神奈川西部エリアのご当地麺として、確固たる地盤を築き上げた。
小田原市は、そんな「小田原系」を提供する名店として、「味の大西 小田原店」、「いしとみ」、「しら鳥」を擁する。これらの店舗は、長年にわたり地元密着型の営業を重ね、今では、堂々たる地元のソウルフードのひとつとして認知されるに至っている。
もちろん、小田原のラーメンは、「小田原系」にとどまるものではない。同地のラーメンシーンの外縁を大きく押し広げる役割を果たした先駆者的な存在が、1978年創業の「くまもとらーめん ブッダガヤ」だ。
「くまもとらーめん ブッタガヤ」のおすすめラーメン、「ブッタガヤ」。
熊本ラーメンの名店「桂花」の黄金期の味を引き継ぎ、頑なに守り続けること約半世紀。2000年頃には、既に「小田原で、小田原系以外のラーメンと言えば『ブッダガヤ』」という定評を獲得し、現在もなお、押しも押されもせぬ小田原を代表するラーメン店のひとつとして君臨している。
また、「町中華」から派生した地域適応型の1杯として、1979年に創業した「中華 四川」も、外すことができない存在だ。同店は、豚挽肉・ザーサイ・豆板醤により構成される餡状のスープに縮れ麺を合わせた「小田原タンタン麺」発祥の店として知られる。一般的な担々麺とまったく異なるその味わいは、素朴でありながらもオリジナリティに満ちあふれ、地域の日常に深く根差しながら、観光客にも鮮烈な印象を残し続けている。
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