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2026.05.16

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音楽にできること、環境に必要なこと。チャリティコンサート「My Planet」が広げる次のアクション


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連載「The BLUEKEEPERS project」とは……

世界的音楽家のヴァスコ・ヴァッシレフさんによるチャリティコンサート「My Planet」。そのアジア初公演をサポートした、セイラーズ フォー ザ シー日本支局 理事長でOCEANSのSDGSアドバイザー・井植美奈子さんとの対談の最終章をお届け。自然環境への取り組みと、音楽が成し得ることにふたりが思うこととは?

▶︎第1回第2回を読む
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【写真11点】「音楽にできること、環境に必要なこと。チャリティコンサート『My Planet』が広げる次のアクション」の詳細を写真でチェック

[右]井植美奈子(いうえ・みなこ)⚫︎ディビッド・ロックフェラーJr.が米国で設立した海洋環境保護NGO[Sailors for the Sea]のアフィリエイトとして独立した日本法人「一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局」を設立。京都大学博士(地球環境学)・東京大学大気海洋研究所 特任研究員。総合地球環境学研究所 特任准教授。OCEANS SDGsコンテンツアドバイザー。[左]ヴァスコ・ヴァッシレフ(Vasko Vassilev)⚫︎ヴァイオリニスト・指揮者/ブルガリア出身。8歳でソフィア・フィルハーモニー管弦楽団と公演しレコードをリリース。10歳からモスクワ音楽院に留学し、数々の国際コンクールで受賞。1993年、史上最年少の23歳で、英国ロイヤル・オペラ・ハウスのコンサートマスターに就任、2005年には同クリエイティブ・プロデューサーに就任。ブルガリア文化大使も務めている。

[右]井植美奈子(いうえ・みなこ)⚫︎ディビッド・ロックフェラーJr.が米国で設立した海洋環境保護NGO[Sailors for the Sea]のアフィリエイトとして独立した日本法人「一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局」を設立。京都大学博士(地球環境学)・東京大学大気海洋研究所 特任研究員。総合地球環境学研究所 特任准教授。OCEANS SDGsコンテンツアドバイザー。[左]ヴァスコ・ヴァッシレフ(Vasko Vassilev)⚫︎ヴァイオリニスト・指揮者/ブルガリア出身。8歳でソフィア・フィルハーモニー管弦楽団と公演しレコードをリリース。10歳からモスクワ音楽院に留学し、数々の国際コンクールで受賞。1993年、史上最年少の23歳で、英国ロイヤル・オペラ・ハウスのコンサートマスターに就任、2005年には同クリエイティブ・プロデューサーに就任。ブルガリア文化大使も務めている。


若い世代とともに育てる意識



――井植さんとヴァスコさんとの接点は、今後どのように強固になり、そして広がっていくのか……将来のビジョンを教えてください。

ヴァスコ・ヴァッシレフさん(以下、ヴァスコ) まだ具体的には検討している段階ですが、方法はいろいろあると思っています。

すでに地球は危機的な状況にあるので、一人ひとりができることを積み重ねていくことが大切です。小さな取り組みでも意味はあるはずですし、例えば牡蠣や帆立の貝殻をパーカッションとして使うこともできますし、海洋保全をテーマにした動画で演奏することもできる。



ヴァスコ 環境問題への直接的なアプローチとは少し違うかもしれませんが、以前、ブルガリアのバンスコというリゾート地で開催されたユース・スキー選手権のプロモーションビデオで、スキーを滑りながらヴァイオリンを演奏したこともあります。そのときも、今回の「My Planet」と同じくヴィヴァルディの『四季』から、スキーにちなんで『冬』を演奏しました。自然と音楽が交わるひとつの例として、面白い取り組みだったと思います。

「My Planet」は日本が初めてのアジア公演でしたが、今後はベトナムや韓国、シンガポールなどにも広げていきたいと考えています。



井植美奈子さん(以下、井植) 日本での再公演もぜひ企画したいと思っています。特に、多くの高校をご紹介したいですね。今回も学生たちの目が本当に輝いていて、とても印象的でした。世界には自然災害で苦しんだ方々がたくさんいますし、それは地球全体の課題でもありますから、一緒にできることは多いと感じています。

ヴァスコ 地球環境のために、僕たちは何をすべきか。さまざまな活動を模索できたら良いですよね。



井植 私としては、善意の醸成や教育を大切にしながら、若い世代に寄り添い、彼らがすでに持っている責任感を育んでいきたいと考えています。実際、若い世代のほうがこうした問題に敏感だと感じますね。

ヴァスコ それは本当にそう思います。私自身も、取り組みのきっかけは歳の離れた妹でしたから。若い世代から学んだ象徴的な出来事のひとつだと感じています。

井植 そして、規制や国際的な協力も非常に重要ですが、それを実現するうえで基盤になるのは一人ひとりの判断です。だからこそ、人々への教育がより重要になるでしょう。



ヴァスコ そうしたときに、音楽は大きな力を発揮できるはずです。互いに信頼し合い、団結して何かを成し遂げる力が、音楽にはある。何より大切なのはハーモニーです。ハーモニーが崩れれば、不協和音が生まれてうまくいきません。

ご存じのとおり、音楽にはルールや規定があり、とくに古典的なハーモニーには、あるべき形が定められています。その土台の上に新たな学びや創造が重なり、17世紀以降、何世紀にもわたって発展してきました。



ヴァスコ とりわけ楽器、つまりヴァイオリンやピアノには言葉がありません。歌は言語を知らなければ、その詞に込められた意味を理解するのが難しい場合もあります。もちろん歌に大きな力があるのは確かです。私自身、ロイヤル・オペラ・ハウスで働くうえで多くの歌声に触れてきました。

一方で、ベートーヴェンの『ヴァイオリンとピアノのためのソナタ』は、イギリスでも日本でもアメリカでも中国でも同じように伝わります。「環境を守ってください」と直接歌うことはできなくても、別のかたちでその思いを届けることはできる。器楽演奏者であることを幸運に感じているのは、その点にあります。言葉がないからこそ、国や文化を越えてメッセージを広げていけるのです。




また、音楽には国境がありません。一つの演奏で、世界中の誰にでも同じようにメッセージを届けることができる。それはとても大きな力だと思います。私たちはグローバルな社会に生きていますが、そこで境界線を引くべきではありません。地球に暮らす以上、本来はひとつの存在ですから、「ここだけ守りたい」「あちらは関係ない」といった考え方にはならないはずです。



井植 地球はひとつですし、海もひとつ。世界はつながっています。手を取り合って取り組むことは、とても大事だと思います。何より、みんなでやるほうが楽しいですよね。

今回、ヴァスコさんとイギリス大使館を訪れた際に、僭越ながら急遽、私がピアノ伴奏を担当して『カルメン』を一緒に演奏しました。一人で弾くとどこか淡々としてしまうのですが、誰かとともに演奏する時間は本当に楽しかった。音楽を通じて語り合っているようで。

そのとき、改めて感じたんです。調和や協力は、一人ではなく一緒に取り組むことで、より大きな力になる、と。それは海洋や地球環境に関する課題を克服するときも同じでしょう。




「My Planet」は急速に、そして確実に広がりを見せている。環境問題に対するアプローチは多様だが、根底にあるのは共有することと続けること。その一端を担う手段として、音楽が世界の架け橋となった。未来への魅力あふれるプロジェクトの今後も注目だ。

笹井タカマサ=写真 佐々木彩=取材・文

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