「NIPPON CRAFT QUEST」とは……▶︎
すべての写真を見るアートの島・瀬戸内への玄関口でもある岡山では「街を歩けばアートにぶつかる」と言っていいくらい、ナチュラルにアートが点在する。
しかも、建築も含めた古いモノと融合して新しい感性が爆発している。
ある意味カオスなカルチャーゾーン・岡山市街を散策。
新旧が層を成す門前町。醤油蔵が醸す文化の場
建物は、後楽園通りと旧倉敷往来の角地に立つ。もともと池田藩の依頼を受けて創業した醤油蔵で、その後は市民銀行として近隣の住民に親しまれてきた。
岡山後楽園へと続く門前町に、近年静かな変化が起きている。現代アーティストと建築家が共作した一棟貸しの宿泊施設や、若手によるクラフトビール専門店などが点在し、歴史ある街並みに新しい感性が層を成すように重なり始めている。
その流れの核となるのが、明治期の醤油蔵を改修した「福岡醤油ギャラリー」だ。
ひとつの巨大な施設ではなく、街全体を回遊する分散型ミュージアムの構想を語る石川さん。「アーティストの世界観を点在させて、街歩きのなかで何かに出合う楽しさを提供したい」。
岡山出身の実業家、石川康晴さん率いる石川文化振興財団によって整備されたこの施設は、梁や石段といった当時の記憶を残しつつ、現代美術の展示空間として姿を変えた。
ネズミの作品はライアンの代表作。壁の穴から現れるネズミが、妙に哲学的なメッセージを語りかける。その声はライアンの娘が担当した。
ここでは現在、コンセプチュアルアーティストのライアン・ガンダーの作品が展示されている。石川さんとの親交から実現したこの企画は、蔵ならではの奥行きや陰影のなかで、美術館では味わえないアート体験をもたらしている。
ピカソの作品をソースにした平面作は、メディアによって作られたピカソのイメージを考察する挑戦的な試み。
石川さんの視線は、ひとつの施設にとどまらない。歴史的な建物を文化の拠点として再生し、街に点在させることで、街全体をひとつの大きなミュージアムに見立てる壮大な試みだ。
かつての醤油がそうであったように、アートという新たな文化がじっくりと時間をかけて街を醸していく。門前町で今起きているのは、そんな心地良い発酵のプロセスなのかもしれない。
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