ミシュランシェフの信頼を勝ち得た塩づくり
師匠・山下氏による塩は、手揉みを繰り返しながら結晶の大きさや食感、透明度、硬さを調整して誕生する至高の逸品。
帰国後は日本の高校に編入せず、内田さんは淡路島で天日塩を手掛ける山下氏に弟子入りを決める。塩づくりに対する造詣の深さ以上に、人としての魅力や、日本を思う気持ちが同じであったことが理由だという。
3年間の修業時代は、完全天日製法による塩づくりを学びながら、英語力を活かし営業も務めた。諸外国のミシュランシェフに、自分たちの塩を使ってもらえるようコンタクトしていったのだ。
「アピールしたのが、粒の大きさや形、浸透圧、ミネラルバランスなどの調整で、1万種類以上の塩をつくれること。シェフ各々が求める塩をオーダーメイドで提供できるということでした」。
塩づくりは完全天日製法による。ビニールハウスの中に黒い容器を置き、その中に海水を入れ、太陽熱で蒸発させていく。夏など暑い季節には1週間ほどで天日塩が出来上がる。
興味深いのは、1万種類の塩は同じ海水からつくれることだ。それこそが天日塩の最たる特徴なのだという。
「電力を使う工業製法で大量につくる精製塩とは違い、海水と太陽光だけでつくる天日塩は手を入れられるから味をコントロールできるんです。たとえば肉料理で旨みを増すために使う塩も、欲する味わいはシェフごとに違います。
そこで3種類の塩を選んで、同じ肉の異なる部位にかけて3分ほど放置。すると異なる膜の張り方をしだすため味わいが三者三様になっていきます。こうした世界的に見ても非常にユニークな生産背景を通してシェフたちと一緒に塩づくりをし、信頼を獲得していきました」。
現在販売している2種類の天日塩。小粒の「天照」は繊細な味わい。大粒の「月読」は料理にアクセントをつけたいときに活躍。
現在は地元・愛知県に戻った内田さんと淡路島の山下氏は、それぞれの拠点で、海水と太陽という自然からの恵みをいただきながら、世界15カ国200人以上のシェフたちが理想とする塩を生み出す日々を送っている。
4/4