OCEANS

SHARE

成功者に見られたいけど……。“ギャップ”との葛藤


世の流れを汲み取り、数々のサービスを打ち出し会社を成長させていった小野さん。2017年にはライブ配信会社のCEOにも就任。世間的には成功者、いわゆる勝ち組であるが、当の本人にはまったくその感覚はなく、むしろ苦しみの方が大きかったのだという。
advertisement

「成功者なんて認識はまったくない。確かに業界では僕の名を知っている人は少なくなかったけど、楽天の三木谷さんや孫さんを見てしまうと自分は何もしてないも同然。比べればキリがないけど、自分でも成功者と見られたい、勝ち組と呼ばれたい、という欲と自分自身でそう思えない、このギャップがものすごい苦しみでした」。
 

業績が良いときや売上げの伸びに関わらず、その葛藤は持ち続けていたのだという。

「まず売上をいかに上げるかを求められる立場だし、自分も数字で自分の力を示せると信じていたので、売上げはメンタルに影響を及ぼしました。ただ、売上の大きさ = 喜びの大きさではないのです。
advertisement

仮に売上が100億いって、うれしいと。でもそこから120億になっても伸びが減っているからそんなにうれしくない。一方で200億から150億に落ちたらすごい苦しみになる。人間はプラスアルファの差分にしか喜びを感じないのです」。

当時は仕事をしながらもマラソン、しかもサハラ砂漠で250kmや南極で100kmといったエクストリームな環境でのマラソンにハマっていたという。

「ビジネスでもマラソンでもジェットコースターのような刺激、より大きなインパクトを求めてたんです。どちらも承認欲求に繋がってたし、承認が得られれば得られるほどもっと欲しくなる。手に入れた瞬間はいいけど、その後の虚無感、苦しみもまた大きくなる。その苦しみを埋めるためには今まで以上の成果がないといけない。完全に中毒者と同じ。会社も肉体も無理が生じてきますよね」。
 アタカマ砂漠 250km のレースに参加する小野さんと仲間。著書『マラソン中毒者』(文藝春秋)より

仲間とアタカマ砂漠 250km のレースに参加する小野さん。著書『マラソン中毒者』(文藝春秋)より


そうして自分自身の限界に達した小野さんは2022年8月、突如としてキャリアを投げ捨てたのである。

「当時のライブ配信の会社はコロナ禍で想定より遥かに売上が伸びて、そこでまた勘違いする自分が生まれて。偉くなったと見せたい自分と本来の自分との実態の差、長年抱えていた嘘を見ざるを得なくなって……。ギリギリ溢れそうになっていたものがこぼれ落ちたんです。

次のことは何も考えてなかった。このままいったら自分で自分をなくす可能性があるくらい、切羽詰まっていたんです」。
3/4

次の記事を読み込んでいます。