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「福祉の街」となったが物騒なことも

現在のドヤは、福祉アパートになっているところも多い。生活保護を受給する人たちが生活するアパートだ。山谷だけではなく、西成や寿町も「肉体労働者の街」から「福祉の街」に転換している。
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「福祉の街」というと「献身的な愛の街」のように聞こえるが、もちろん基本的にはビジネスである。なかにはタチの悪い弱者ビジネスも存在するので注意が必要だ。

山谷には「センター」と呼ばれる施設がある。「公益財団法人 城北労働 福祉センター」が正式名称だ。西成や寿町のセンターに比べるとずいぶん小ぶりなビルだ。


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このセンターでは、 福祉相談や医療相談などをしているし、建物の前で炊き出しをやっていることもあった。 営業時間内は建物内は解放されて、ホームレスたちがくつろいでいた。ホームレスの取材をしているときは、よくここに話を聞きに行っていた。

あるとき、話を聞いていると真後ろから、怒鳴り声が聞こえてきた。

「てめえ! 俺の悪口言ってるのか! ああ!?」

どうやら僕に向かって怒鳴っているらしい。先程まで話を聞いていたホームレスたちが僕の後ろにいる人に向かって、

「やめろ! そんなもん出すんじゃねえ!」と諌めている。どうやら刃物を出したらしい。山谷は刃傷沙汰が多い街だ。動悸が激しくなる。下手に動いたら刺されそうだ。

どうしようか迷っていると、センターの利用時間終了を告げるチャイムが鳴った。皆が立ち上がったので、その隙に慌てて外に飛び出た。一瞬振り向くと、男の手には銀色の包丁が握られていた。
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