震える足で踏み出す、不退転のスタートライン

ワンマントークショーの舞台には、演出めいた装飾も映像もない。会場の時計さえ灯が消され、気が散るものは何ひとつない。川西さんの息遣いさえ聞こえてきそうなほど、観客の意識は舞台に集中している。そのヒリヒリする状態を本人は楽しんでいるのか、それとも……。
「怖いですよ、やっぱり。ネタを作っている最中は逃げ出したくなることもあります。でも、その葛藤を経ているから開き直れる。舞台に上がる直前はもう腹を括っているので、その剥き出しの姿を皆さんに見ていただいている感じです。僕にもお客さんにも下地がない手探りの舞台というのは、なんだろう……怖いですけど、芸人として何かすごくいい経験をしているなと。それは間違いなく言えると思います」。

川西さんは自身のライブを「ワンマントークショー」と呼ぶことにこだわる。形式的にいえば完全な「スタンドアップコメディ」だが、あえてその言葉を使わない意図をこう話す。
「日本でスタンドアップコメディと言っても、まだピンとこないですよね。絵はなんとなく浮かぶけど中身までは浸透していない。変に知っている人ほど『社会風刺でしょ』『政治批判をするんでしょ』って色をつけて見ちゃう。僕もテレビでは言わないような話もしますが政治的な話をしてる意識はないんです。人としてどうなの?という道徳に近いようなものをネタにしてるだけで。
一番大事なのは、余計な先入観を持たずに目の前の笑いと向き合ってもらうこと。純粋に笑いを楽しんでもらいたい。だから、あえて『ワンマントークショー』と呼んでいます」。
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