あのキルナを手がけたのもこの人でした
草賀さんは大学卒業後、シャツメーカーを皮切りにアパレル業界を渡り歩いてきた。キャリアを積んだ草賀さんがデザイナー・デビューを飾ったのが知る人ぞ知るバッグブランドのキルナである。
「バッグのデザインもやっぱり十年一日でした。たとえばデイパック。お約束の雨蓋はめくれるし、正直にいえば邪魔ですよね。防水したいなら止水テープにすればいいだけの話。まだまだ機能からアプローチすることができると考えたんです」。
修理を商品開発の一環と割り切って無料にし、アップデートを重ねたキルナは売れに売れた。そんな草賀さんの転機が取引先の工場に山のように積まれていたフリーロックシステムだった。草賀さんは2017年、スニーカーブランドのターミガンを立ち上げた。

「スニーカーに手をつけるつもりはなかったんですけどね。もっとも好きなアイテムだから、いつまでもファンのひとりとして接していたかった。でも、その山には抗えませんでした」。
フリーロックシステムを取り込んだブランドは、揃ってフューチャリスティックなデザインを採っていた。草賀さんはシンプルなアッパーに落とし込んでこそ生きると考えた。ファーストコレクションはクラシカルなコートシューズとサンダルをラインナップした。サンダルを加えたのは、甲が低く、既存のサンダルが合わないという悩みを抱えていたからだ。

ターミガンはしょっぱなから大手セレクトショップにも食い込んだ。
幸先良いスタートを切るも、草賀さんの心中は複雑だった。ターミガンは3万円を超えた。国産で、素材にもこだわった。原価を考えれば真っ当な価格設定だったが、スニーカーというアイテムにつける値段としてはいかにも高かった。
ターミガンの評判を聞きつけた中国の工場が売り込みに来たのは、そんな時分だった。
「そのサンプルをみて、一目で気に入りました。ツラがいいんです。これって修正を重ねてもたどり着けるものではない。OEM生産で鍛えられた感性だと思う。こうしてものづくりの土台が整いました」。
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