「ヘルシーな代替肉」として世界に羽ばたいたTOFU
特に僕らのような、日々アクティブに過ごす世代に注目してほしいのが、コンビニで手軽に買える「豆腐バー」だ。スティック状に固められたその姿に、もはや醤油の出番はない。バジルが香るイタリアン風味から、驚きのチョコレート味まで。甘いフレーバーはもはや「豆腐」というカテゴリーを超え、完全に「高タンパクなヘルシー・スイーツ」として独立した存在感を放っている。

仕事の合間に、あるいはジムでのトレーニング後に、チョコレート味の豆腐をかじり、効率的にプロテインを摂取する。かつてラッパを追いかけていた少年たちが、数十年後にこれを見たら、きっと腰を抜かすに違いない。豆腐は「食卓の脇役」から、忙しい現代人のライフスタイルに寄り添う「モバイル・プロテイン」へと進化したのだ。
さて、視点を世界へ広げてみよう。今、日本の豆腐は欧米で空前のブームを巻き起こしている。だけど、日本人が抱く「豆腐=繊細な和食」というイメージのまま彼らの反応を期待しない方がいいかもしれない。日本に来た外国人がひと口食べて「TOFUっておいしい!」と、出汁の繊細な風味に感動するのは、実は稀なケースだ。なぜなら、彼らにとってTOFUは「味を楽しむもの」ではなく、「ヘルシーな代替肉」だからだ。

欧米のスーパーでは、豆腐は野菜コーナーではなく、肉の隣に堂々と並んでいる。そしてその質感は、日本の絹ごし豆腐とは似ても似つかない。包丁で切っても崩れないほど硬い「エクストラ・ファーム(超硬め)」なものが主流だ。彼らはこれをステーキのように焼き、濃厚なBBQソースを塗りたくり、ハンバーガーのパティとして楽しむ。
つまり、彼らにとって豆腐は「味がないからこそ、何にでもなれる真っ白なキャンバス」なのだ。使い勝手の良さこそが、環境負荷を気にする人や、ストイックに身体を絞る人の心を掴んでいる「TOFU」の正体である。
イタリアでは“大豆のチーズ”として
ここで、僕の母国イタリアの事情を深掘りしてみよう。パスタとチーズを愛してやまないイタリア人にとって、豆腐はどう映っているのか。面白いことに、イタリア人は豆腐を「豆の加工品」というより、「Formaggio di Soia(大豆のチーズ)」と解釈している。

イタリアの家庭で豆腐がどう魔法をかけられているか、いくつか紹介しよう。これが驚くほどBuono!なのだ。
豆腐のカプレーゼ
モッツァレラチーズの代わりに、水気を切った硬めの豆腐をスライスする。そこに最高級のエキストラバージンオリーブオイルをたっぷり回しかけ、フレッシュなバジルと岩塩を。豆腐の淡白な味わいは、オリーブオイルのフルーティーな香りを引き立てる最高の土台になる。
豆腐のティラミス
伝統的なマスカルポーネチーズの半分を、裏ごしした絹ごし豆腐に置き換える。カロリーを大幅に抑えつつ、豆腐特有のコクがクリームの重さを中和し、驚くほど上品で滑らかな仕上がりになる。
パスタの具材として
サイコロ状に切ってカリカリに焼き、パンチェッタ(塩漬け豚肉)の代わりにカルボナーラ風のパスタに入れることもある。
イタリア人にとって、豆腐はもはや日本料理の枠を飛び出し、自分たちの日常食である「チーズ」の代替品、あるいは新しい健康食材として完全にローカライズされている。
日本人が「豆腐はこう食べるものだ」という固定観念に縛られている間に、世界では豆腐のポテンシャルが縦横無尽に引き出されている。かつて友人が語ってくれた、あの移動販売の素朴な「豆腐」。それが今、ニューヨークでハンバーガーになり、ミラノでヘルシーなティラミスになり、東京でプロテインバーになっている。
僕たちが次に豆腐を口にするとき、それは「醤油をかける一品」ではなく、世界の食文化が交差する最先端の食材として映るはずだ。

豆腐の歴史を遡れば、古代中国から伝わり、日本で独自の文化として花開いた。そして今、それは「TOFU」として世界へ羽ばたき、再び新しい形となって日本へ戻ってきている。
僕たち日本に住む者が学ぶべきことは、その柔軟さかもしれない。伝統を守ることは大切だけど、世界が熱狂する「TOFU」の新しい楽しみ方を取り入れることで、僕たちの食卓はもっと豊かに、もっと健康的になれるだろう。
今夜豆腐を買うなら、ぜひオリーブオイルと岩塩を試してみてほしい。読者のみなさんがまだ知らない「新しい日本」と「懐かしいイタリア」が共存しているはずだ。
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