30人の遺体を弔った住職の孫に遭遇

これは阿部さんの持論ですが、都井は結核なんかじゃなく、相当の健康体だったそうです。じゃなきゃ、短い時間であれだけの重量のある凶器を抱えたまま、30人を殺害するのは無理だと。嘘つきで卑劣なクズ男だったとも言ってましたね。
徴兵された村に若い男はいない。都井はその立場を利用して多くの女性と肉体関係を持っていたそうです。そして、結核という自らの嘘で村八分を招いて、逆恨みから犯行に及んだんだろうと。真相はわかりません。真実は、この村に住んでいた人のみ知ることですから。
僕らは集落に一軒だけあるお寺を訪ねることもできました。そこでも不思議な巡り合わせがあったんですが、ご住職が当時の凄惨な現場を片付け、被害者たちの遺体を弔った住職のお孫さんでした。

ご住職の案内で村を歩くと、一見のどかな美しい棚田の風景が広がっています。しかし、ご住職が「この家は全員が殺されました」「お隣も全員です」と淡々と説明される家のほとんどが、かつての惨劇の現場です。
家は新築されているので見た目は変わっていますが、土の下には癒えない傷跡が眠っている。そのギャップが、真夏の午後の陽光のなかでとても不気味でした。ちなみに、阿部さん曰く、先先代の住職に手厚く扱われた被害者の霊はきれいに成仏しているそうです。
護法祭で神様の横で一緒に走った僕を、本物の殺人鬼の霊が襲う。そんな両極端なエネルギーに触れた今回の岡山ロケは、僕にとっても忘れられないものになりました。
◇
岡山の地で、神事の光と凄惨な事件の闇に触れた今回の旅。「生と死の境界線」を歩き続ける原田さんの探求はさらなる深みを増したようだ。
そして、文中に登場した「ADのK君」。次回のエピソードは、彼の霊能力を裏付ける数奇な物語をお届けする。