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惚れこんだ芸術家に、自身の本質的な思いを託す

――「体験型」や「ファン化・コミュニティ構築」がさまざまなビジネスの鍵となっている昨今。茨城さんが現在取り組むプロジェクトも同様に、世界中のメディアでそのストーリー性が取り上げられ、話題を読んでいる。いったいどんな内容なのか。



私たちYES___は、現代アートやブランド、伝統工藝・技術などのクリエーションにおける普遍的・恒久的な価値を、次世代につなぐ形で地球・国際社会に届けていく。そういった理念に基づく事業を展開しています。現在取り組んでいるのが、現代アーティスト・寒川裕人の作品を常設展示する複合文化施設。インドネシア・バリ島にて2026年内のオープンに向けて、目下準備を進めているところです。

彼とは20年に出逢い、開かれた大空間で初めてその作品に触れたのは、21年に東京都現代美術館で開催された彼の個展。当時はコロナ禍真っ只中でしたが、コモディティが溢れ、大量生産・大量廃棄が進む社会において、それまでの仕事や暮らし方が正しいのか、自問する日々でした。同時に、後に弊社を共同創業するパートナーとともに元々好きだった海遊びや、瞑想・ヨガなどを体験しながら内省的な時間を過ごすうちに、「地球と遊ぶ」という本質的な価値観に目覚めるように。「哲学」「自然・地球」「ボーダレス」など興味のあった言葉・ジャンルが、ざっくりとではありますが浮かんできてはつながり、クリエイティブ意欲が湧いてきたのです。

そんなタイミングで目にした彼の作品には、衝撃を受けました。アートに精通された方々のみならず、子供からお年寄りまで、さらには国籍も問わず、多くの人が作品群を前にして直感的にも楽しんでいたのです。まだ幼い私の息子にも鮮烈だったようで、街にあるありふれた風景を見ては、楽しそうに裕人の作品を思い出しています。息子の原体験として心・記憶に刻まれており、「これほど素晴らしい作品をもっと世に広く伝えたい」という思いが湧き、行動に移した次第です。



――言語、世代、時間を超えて、多くの人の心を動かす。「そんな寒川裕人の作品を、どう世界に伝えられるか」は茨城さんのひとつの使命となったわけだが、その具体的なアプローチは壮大なものとなった。

「ゴールドレイン」や「海庭」といった彼の代表作は、自然の美しさを物理法則に委ねて抽象的にとらえることで、時間や自然環境とともに変化し続ける世界を映します。これは、本来人間的でも平和的でもあります。そんな作品を限られた期間ではなく、エイジレス、タイムレス、ボーダレスに鑑賞できる環境を作りたい。それも単に展示するだけの美術館ではなく、作品群を中心に、建物や自然環境も一体となった空間で。子供たちは次世代を形作る気付きと記憶を、大人は人生において大切なこと(記憶)を呼び覚ます、そんな未来につながる体験を、地球・国際社会に届けたいと考えました。

そこで弊社共同創業者とともにご縁があったのが、世界中から観光客が訪れる場所であり、豊かな自然が残るリゾートでもある、インドネシアのバリ島。アジアの建築界を牽引し、自然と共生する建築を作る建築家のアンドラ・マティンをはじめ、我々の哲学・思想に共感し参画・協力してくださった方々のおかげで、「ミュージアム・アズ・ア・ヴィレッジ」ともいえる、素晴らしい美術館・空間・村が完成に向かっています。世界遺産であるタナロット寺院から程近いエリアに位置し、ホテルやレストランなど多種多様な施設が揃う“村”であり、新しい形のミュージアムを、バリの大自然と美しいアートとともに地域の方々と創り上げるイメージです。オープンまでまだまだ課題は山積みですが、今年お披露目できると私自身もワクワクしています。

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