トレンド③ 地方で勃興!「伝統食のスパイスアップ」
カツカレーとビリヤニはここ数年の継続的なトレンドですが、今年は「まったく新たな風」がカレー界に巻き起こると思います。
名付けて“伝統食のスパイスアップ”。
日本全国の郷土料理にスパイスを取り入れてアップデートした、温故知新なカレーが芽吹き出しているのです。
マスメディアは首都・関西圏ばかりにスポットライトを当てがちですが、日本の各地には、まだまだ紹介しきれていない食材や料理が山のようにあります。
しかも地方に行けば行くほど根強く残っていて、そこで生まれ育った人たちは、そのことにとても誇りを持っている。
なじみ深い“ふるさとの味”を、スパイスを加えることで、さらに高みへ押し上げたい――。そんな志を抱くシェフが現れ始めたのです。
その筆頭が、秋田で「旬とスパイスのお店 星みや」を営む、星宮絢佳さんです。
「星みや」の店主・星宮絢佳さん。イベントでご一緒したときに撮影したもの。
そもそも秋田は、海の幸、山の幸の宝庫。キノコひとつとっても、普段聞かないような種類がどっさりあります。それなのに秋田県民は、ごく一般の方でも「これはあみこ茸、こっちは金茸」と識別できる。食材の感度が異常に高いんです。
そんな土地柄ですから、飲食店のレベルも凄まじい! ハイクオリティな食材を活かしきる、ものすごい腕前のシェフが揃っています。ジビエを極めたお店から世界的権威のグルメガイド「ゴ・エ・ミヨ」で紹介されているフレンチまで、徒歩圏内にひしめき合っているほどです。
そんな食レベルがカンストした秋田で、今もっとも注目されているのが「旬とスパイスのお店 星みや」さん。
秋田駅西口より徒歩15分ほどにある「旬とスパイスのお店 星みや」。
店主の星宮さんは自ら魚をさばき、寿司も握れる和食出身の料理人です。確かな技術に加えて、世界中を飛び回っては「美味しい!」と感じた料理のエッセンスを引っこ抜き、自分のものにしてしまう抜群のセンスの持ち主。
秋田でしか食べられない希少な珍味・棒穴子を上海風に仕立てたり、比内地鶏をアフガニチキンとして提供したり……独創的でとんでもなく美味しいメニューが目白押しです。
秋田の郷土料理「棒穴子」を上海風に黒酢で仕立てた「焼き棒穴子 上海風」1200円。皮はパリッと香ばしく、良い感じにクセのある逸品。
なかでも看板メニューが、旬の食材をふんだんに使った季節のビリヤニ!
「秋田産熊肉のビリヤニ」1500円。その日仕入れた食材で具材や仕立て、副菜が変わる。熊肉の香ばしさに、バスマティライスのパラリとふわりの間の絶妙な炊き加減が絶品。
星宮さんのビリヤニ熱は相当なもので、自身のお店をオープンする直前、東京の伝説店「
ビリヤニ大澤」さんが従業員を募集していると知って急きょ開店準備をストップ。
「ごめんなさい、東京で修行してきます!」と開店準備を進める皆さんに頭を下げて、大澤さんに弟子入りしたのです。秋田のお店の家賃を払いながら東京で腕を磨き、ついには師匠から、卒業証書代わりに鍋を伝授されたそう。
この大澤仕込みの本格ビリヤニに、ジビエの王者クマやマフグ、きのこなどなど、秋田の素晴らしい食材を掛け合わせる……。
断言します。「星みや」さんのためだけに新幹線に乗ってください。絶対に損させませんから。
星宮さんの夢は「ビリヤニを秋田の郷土料理」にすること。実現に向かってまっしぐらに駆け上がっていく姿は、キラキラと輝いています。
まさにビリヤニ界の次世代スターであり、秋田の星。ふるさとの魅力を全国に発信しようと通販している冷凍ビリヤニも秀逸で、あの秋元 康さんも食べて絶賛されていました。
もうひとつ、「伝統食のスパイスアップ」を語る上で欠かせないのが、山形の「DAZ CURRY」さんです。間借り営業を経て、2025年10月に実店舗をオープン。
「DAZ CURRY」は、山形駅より車で7分ほど。
シンプルでスタイリッシュな空間。
このお店の何がすごいって、「芋煮」をカレーにしてしまったのです!
これがウワサの「芋煮カレー」。普段はお目にかかれない限定メニューで、通常は日替わりの「本日のカレー3種」を提供している。
ものすごく美味しい芋煮に、出汁がきいたカレーをちょっとずつ溶かしこむことで、徐々に“スパイスアップ”されていく。伝統から進化に至るグラデーションを、ひと皿で楽しめるんです。
ちなみに「DAZ CURRY」という店名、HIPHOP系かと思いきや、山形弁の語尾「だず」が由来なんだとか。
言葉を選ばずにいえば、今まで「田舎臭い」「ダサい」と言われていたものが、一転して「最新」かつ「おしゃれ」になっていく。
まるで民謡ロック! 東京では絶対に真似できないカルチャーです。
大都市を中心に盛り上がった「スパイスカレー」は、海外の食文化をはじめ、あらゆる要素を取り込んで“何でもあり”な世界になっていきました。
一方、「伝統食のスパイスアップ」は、秋田の食材や芋煮など“ブレない軸”があります。それは、土地に根差したアイデンティティとも言えるでしょう。
いずれは、その土地ならではの食材と水、そこから生まれるグルメを求めて、「ジャパニーズカレー・ツーリズム」が起こるかもしれません。
2026年、「伝統食のスパイスアップ」が花開く瞬間を、ぜひお見逃しなく!
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「カツカレーの自由化」、「ビリヤニのPOPs化」、そして「伝統食のスパイスアップ」。2026年のカレートレンド予想、いかがでしたか?
何かと沈滞しがちな世の中ですが、日本のカレー界には明るい光を感じます。
さまざまな場所で、地のものを活かした“旅する理由になるカレー”が生まれている。それも行政のような旗振り役がいるわけでもなく、地元を愛する人々が自発的に、同時多発的に取り組んでいる。これこそ、真の地域活性化だなと。とくに東北でカレーが盛り上がっているワケは……と、これはまた別の機会にお話ししましょう。
2026年も素晴らしいカレーの数々が織りなす、ホットなカルチャーをお届けします! どうぞお楽しみに。
▶︎カレー細胞さんのインスタはこちら!※写真や内容は、取材当時のものです。