
北村一輝という俳優を語るとき、どうしても豪快な生き方に目がいってしまう。
商船学校入学の後、数年間に海外放浪、役作りのために前歯を抜くなど、常識外れのエピソードが満載。どれも事実だが、本人はそれを武勇伝のように語らない。
「当時は、それしか選択肢がなかっただけですよ」。50代後半を迎えたいま、北村さんが向き合っているのは過去の栄光ではない。
【写真17点】「『還暦でもう一度攻めたい』俳優・北村一輝(56歳)が描く、第二の生き様」の詳細を写真でチェック 45歳で感じた、立ち位置の変化
北村一輝(きたむら・かずき)⚫︎1969年7月17日生まれ、大阪府出身。商船学校入学のち、海外放浪を経て俳優の道へ。1999年、映画『皆月』『日本黒社会 LEY LINES』で注目を集め、キネマ旬報日本映画新人男優賞ほか多数の映画賞を受賞。以降、映画・ドラマを中心に第一線で活躍を続ける。凶暴さと繊細さを併せ持つ存在感、徹底した役作りで知られ、作品ごとに強烈な印象を残してきた。一方で、料理や日用大工を好み、小型船舶一級免許を持つなど、海や自然に親しむライフスタイルも特徴。
「どちらかというと、常に先のことしか見ないタイプです。若い頃は極端でした。攻めるときは一気に攻める。守るときはしっかり守る。オフェンスとディフェンスが、はっきりしていたと思います」。20代〜30代の頃は、完全にオフェンス重視。バブル終盤、身近な先輩たちが眩しく映った時代に、北村さんはとにかく貪欲だった。
「もっと知りたい、もっといいものを見たい。仕事で評価されたい気持ちも強かったです。僕はすべての物事を全力でやること自体に価値を感じていました」。その攻めの姿勢は40代半ばまで続いた。転機は45歳前後。現場での空気が変わったことに気付いたという。
「『あれ、自分は輪の中心から少し外れてきているな』と感じました」。

エンタメの主役は若い世代。日本全体の年齢構成とは裏腹に、表舞台の重心は軽やかに前へ進んでいく。その現実を前に北村さんは立ち位置を見直した。
「このままじゃまずいかも。そう思って、オフェンスからディフェンスへ切り替えるようにしました」。生活も考え方も大きく変えた。タバコをやめ、酒を減らし、時間の使い方を含めて日々のリズムを整えていく。そして、これまでとは違うスタンスで過ごすことに決めた。
「まず人の話を聞く。自分で決めつけず、言われた通りにやってみる。そういう今までの自分がしなかったことに挑戦してみました。そうするとパーッっと視界が開けるような感じがしてね。『あ、こういう考え方もあるんだ』と気付くことが多くなりました」。 2/5