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一人だからこそ始まる物語。知らない人が「顔馴染み」になる場所


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立ち飲みのカウンターは、社会的な肩書をそっと横に置ける場所です。ネクタイを緩めたサラリーマン、買い物の帰りに一杯だけ楽しむ主婦、長年通い続けているであろう人生の先輩。皆、一人でそこにいますが、決して「孤独」ではありません。むしろ、都会の喧騒の中で意図的に「個」になる時間を選び、楽しんでいるように見えます。一人の時間を尊重してくれる、この空気感が私は大好きです。

最初は、ただ同じ空間にいるだけ。しかし、2度、3度と通ううちに、いつも同じ曜日の同じ時間に見かける顔があることに気付きます。やがて、目が合えば軽く会釈をするようになり、ある日、あなたが頼んだ料理を見て隣の人が「それ、うまいやろ」とひと言声をかける。あるいは、テレビで流れる野球中継に一緒に一喜一憂する。そんな些細なことがきっかけで、会話の糸口が生まれるのです。

毎週会うけれど、プライベートに深く踏み込むわけではない。でも、そこに行けば会えるという安心感。立ち飲みは「個」でいる自由と、ゆるやかな「縁」でつながる温かさの両方を、奇跡的なバランスで成立させている、稀有な空間なのです。
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私の流儀、「はしご酒」の作法

 
立ち飲みの楽しみ方を極めると、「はしご酒」に行き着きます。これは文字通り、はしごを上るように次から次へとお酒の場を巡ること。立ち飲み屋さんは特定のエリアに固まっていることが多いため、はしご酒には最適です。

大阪で私がよくはしご酒をする地域は、梅田の駅ビル、阪急の高架下、新今宮から西成、天満です。

私の楽しみ方を紹介しましょう。 まず一軒目では、お酒を1〜2杯。そして料理は、その店の「一番の推し」か「本日のおすすめ」を頼みます。立ち飲み屋さんの料理は一皿が小さいので、少量多品種を楽しむのにぴったりです。さっと飲んで、さっと出る。長居はしません。

そして、すぐに次の店へ。これを3〜4軒繰り返します。行きつけの安心できる店と、新しく開拓する店を組み合わせるのがポイント。こうして自分だけの「お気に入りマップ」を作っていく過程は、まるで宝探しのようです。
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