「着ることより、動けること」。決めないことで生まれる自由
華やかさやトレンドよりも“芯の自由さ”がある。
ファッションを語るときも、森山未來の言葉はいつだって身体の感覚から始まる。そんな彼に、まずは今日のコーディネイトについて、少しカジュアルに尋ねてみた。
ジャケット、シャツ、パンツ=すべてMidorikawa

今日の服は、スタイリストさんが用意してくれた「Midorikawa」のものです。だから、自分で決めたわけじゃなくて。ニューバランスの「U1300JP」もいただいたものです。普段はスニーカーはあまり履かないんですけど、これはこれで評判が良くてありがたいです。
——普段からあまり“決め込まない”スタイルなんですか?
僕は「自身のファッションを決めること」に、少し抵抗があるんです。もちろん、ファッションにはカルチャー的な背景があるし、表現の一部でもあると思う。でも、決めすぎると世界観が固定されてしまうような気がして。だから、あえて“決めない”ようにしているんです。
僕にとって、ファッションは「動ける身体」とセットなんです。たとえば、極端な話ですが、タイトスカートを履いていたとしても踊れる。そういう自由さを持ち続けたい。「どんな格好でも踊れる身体でいたい」。それが理想ですね。
——ファッション=自己表現というよりも、「何を着せられても自分でいられる」ことが大事という感じでしょうか。
「これを着たからこうなる」ではなく、「何を着ていても、自分らしく動ける・表現できる」。そういう感覚でいられることが、自分にとっては大事なのかな。
“旅する身体”が、自身のスタイルをつくる
——アクセサリーなどもあまり身につけない印象があります。
30代になる前くらいから、アクセサリーはほとんどつけなくなりました。理由はシンプルで、「失くすから」(笑)。それに、とにかく移動が多いので、できるだけ持ち物をミニマルにしたいんです。
大きなキャリーケースも使わない。空港で荷物を待つのが苦手で、基本は手荷物ひとつで動けるようにしています。自分のペースで移動できるし、何より身軽でいられる。結果的に、そういう“移動の仕方”がファッションにも影響しているということなんでしょうかね。
——つまり、ライフスタイルそのものがファッションをつくっている。
そうかもしれません。「生活の仕方」と「服の選び方」は、別の話じゃなくて地続きですよね。自分の身体の動かし方、暮らし方、移動の仕方、それが自然と服に反映されていく。服に自分を合わせるんじゃなくて、自分のリズムに服が寄り添ってくる感じです。
3/3