大木さんが音楽に懸ける思いも探る

大木さんの話を聞いていても分かるように、ファッションと音楽は密接に関わり合うジャンルでもある。
デビューから20年以上。進化と深化を重ねてきたACIDMANが、約4年ぶりとなるニューアルバム『光学』をリリース。“光”をテーマに描き出す新たな音の宇宙と、その先に見据える世界を語った。
――ニューアルバム『光学』には、どんなテーマが込められているのでしょうか?大木 昔から科学や宇宙の話が好きで、そういう世界を掘り下げていくと、いつも「万物の根源ってなんだろう?」という問いに行き着くんです。
僕にとって、その答えのひとつが“光”。すべての存在は、光から生まれている、そんな風に信じています。
今回のアルバムには“光”を軸にした楽曲が多くて、アイザック・ニュートンが1704年に発表した「光学」という本のタイトルを基にしました。「光を学ぶ」、そして「命を見つめる」。この言葉にはそんな思いを込めました。
――創作のインスピレーションは、どこから得ていますか?大木 映画や音楽、小説などからも刺激を受けますが、根っこにあるのは科学的な好奇心です。
子どものころから、「この世界はどうできているんだろう?」って考えるのが好きで。科学を学べば学ぶほど、むしろ世界がファンタジーに見えてくるんですよね。宇宙論や量子力学なんて、もはやSFを超える不思議さがあって、そこに“未知のロマン”を感じるんです。
僕にとっては、科学もアートも本質は同じで「見えないものを形にすることで、感動を与える」。音楽もまた、この世界を理解しようとするためのひとつの方法なんです。『光学』は、そんな“目に見えない真実”に手を伸ばしたアルバムだと思っています。
――「自分のための表現」と「誰かに届ける表現」、どのように線を引いていますか?大木 音楽って、最初は「楽しい、かっこいい」から始めたはずなのに、続けていくうちにふと、「自分は何のためにやっているんだろう?」って思う瞬間がくるんですよね。楽しさだけでは続けられない。だからこそ、自分のなかの哲学や死生観を音に込めるようになっていったんだと思います。
誰かを救いたいっていう気持ちも、突き詰めれば自己満足かもしれない。でも、その「エゴの先にしか届かない何かがある」と信じています。エンタメを超えた何かを表現したい。それが、今の僕にとっての「究極のエゴ」です。
――この先、さらに目指すものは?大木 願わくば、世界を変えたい。大げさかもしれないけれど、それくらいの情熱を持ってなきゃ、やる意味がないと思うんです。人生って、結局は勘違いの連続で。誰もが「自分が世界の中心だ」と信じて生きている。僕もその中心から見える景色を信じて、音を鳴らしています。
そして、ライブが終わるたびに、ふと思うんです。「もしかしたら今、世界がほんの少し変わったかもしれない」って。
――最後に、大木さんが大切にしているものを教えてください。
大木 やっぱり、「日々を楽しむこと」ですね。もちろん、毎日が楽しいわけじゃない。でも、その中で「ありがたい」と思えるかどうかがすべてだと思っています。例えば、蛇口をひねったら水が出る。それだけでも奇跡だと思えるようにしてるんです。星が見えたら「ラッキーだな」、月が見えたら「手を合わせよう」と、実際、毎晩月に手を合わせてます。
「今、自分が生かされて、そんな感情を抱けること自体が奇跡なんだ」と思えば、何を食べても美味しいし、誰と話しても楽しいし、どんな星空を見ても、ただただ美しいと感じられるんです。
――突然、呼び止めたのにも関わらず、貴重なお話をありがとうございました!大木 こちらこそ、楽しかったです。武道館にもいらしてくださいね!
大木さん率いるACIDMANは、10月26日には7年ぶりとなる日本武道館公演を開催。「武道館という特別な場所に、また立てることがうれしい。ライブは僕にとって一本の“人生映画”のようなもの。全国から集まるファンと、生きる美しさと儚さを分かち合う、そんな夜にしたい」という彼の言葉の通り、 武道館のステージで見事に体現。内側から溢れた音だけが、静かに、力強く、広がっていった。/ Taka"nekoze photo"=写真
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突然の出会いから始まった、まさかの廊下インタビュー。飾らず、真っ直ぐに語る言葉のひとつひとつが、大木伸夫そのもの。音楽も、服も、生き方もすべては一本の線でつながっていた。