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オフタイムに突撃!業界人“リアル私服”パパラッチ


夏季限定メニューとしてではなく、一年を通して「つったい(冷たい)ラーメン」(1000円)を食べられるのが、こちら「ととこ」さん。2012年、千代田区神保町にオープンした店を元気に切り盛りするのは、山形県出身の女性店主。
暖簾をくぐると、カウンター席のみの店内では常連客と店主が軽く会話中。程良く山形なまりが聞き取れて、なんとも心地いい雰囲気を生み出しています。自動券売機はなく口頭注文、あと払い制になります。
“なまり”といえば「つったいラーメン」の「つったい」は山形の方言で「冷たい」のこと。さらに店名の「ととこ」は「にわとり」のこと。文字どおり、スープの出汁は鶏ガラから旨味を抽出、具には炙られた鶏肉が鎮座しています。
「つったいラーメン」に使用される食材は麺も含めて無添加で、旨味調味料も不使用だそう。身体に優しく、健康に配慮した一杯でもありますね。となると、想像されるのは極めて淡く、あっさり系なスープ。確かに油っ気はあまり感じられません。
ところが、ひと口すすると醤油ダレの存在感が非常に重厚。「えっこの醤油、何?」と驚くほど“ガツン!”ときます。
東京で生活する者にとって日常的に口にする醤油ではなく、“from山形”な醤油なので、最初は不慣れな味に戸惑いました。が、ここからがマジック。茹でた麺の温もりが残っていた丼内は、時間経過とともに5個の立方体状の氷が少しずつ溶け、醤油テイストを薄め、スープ全体の味バランスを変えていくのです。つまり、どんどんまろやかになる。綿密な計算を感じますね。
数秒ごとに味が“移ろっていく”という、何とも風流なギミックが「つったいラーメン」最大の特徴。「氷がどのくらい溶けたタイミングの旨さが最適解か?」と、探しながら食べるのも悪くないでしょう。
麺は硬からず柔らかすぎず、食べ手を選ばない食感の細麺。具にはきゅうりをはじめ夏っぽいものが並びます。特徴的なのはふた切れの鶏肉。山形で飼育されている鶏で、無添加のエサで育てているそう。
「とにかく無添加にこだわっています」。
会計時、店主がおっしゃった言葉には、お客さんへの心配りと料理人としてのプライドが感じ取れました。店内の壁面には山形県産の旨そうな地酒が多数並んでいます。酒の肴に相応しいメニューも多く、ラーメン以外の楽しみも豊富な店。今度は夜に行きたいなぁ。
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