
昨年、日本で初めて地球に優しい生分解性国産“ビーチサンダル”の開発に成功した企業がある。株式会社「まちプロ」だ。
販売開始直後より、「環境に配慮したビーチサンダルを提供したい」と考える企業からの問い合わせも多く、地元湘南を中心に広がりつつある。
そんな“湘南ビーサン”の誕生秘話やモノづくりへのこだわりを解説していこう。
▶︎すべての写真を見る 環境への意識が芽生えた原点は子ども時代に

代表取締役社長 大槻 洋さん
まちプロは創業当初からビーチサンダル作りを行ってきたわけではない。なぜ環境にやさしいビーチサンダルを作ろうと思ったのだろうか?
「振り返って考えてみると、私が自然や環境に関心を持った原点は子ども時代にあります。父が環境アセスメントの仕事をしていて、小さいころから連れまわされていたんですよ。水産試験場など、連れまわされる先が遊び場という子ども時代を送りました。生まれ育ったのが、自然が観光資源である湘南ということあって、環境への意識を持つようになっていきました。
成長するにつれ自分でもサーフィンをするようになり、シーズン中に砂浜にビーチサンダルがずらりと並んでいる景色は私にとって馴染みあるものでした。湘南の人たちには、環境資源であり、自分たちの暮らすマチの海をきれいにしようという意識が強く、ビーチクリーンなどもよく行われていました」(代表取締役社長 大槻さん、以下同)。

大槻さんは、最初は役所の環境課で4年ほど勤めたあと、自然が好きで花に興味があったことから、フラワーショップへ転業。しかし、サーフィンで大怪我を負い、休まざるえなくなった。
その経緯から別の仕事として、今度は複合リゾート施設の仕入れ責任者の仕事に就いた。備品だけではなく売店などの商品も仕入れており、そのなかにビーチサンダルがあったという。そこで職人と仲良くなり、商品知識が増えていった。
「懸命に仕事に取り組んでいると、どんどん昇進していきました。でも、私はどうにも昇進が嫌で(笑)。そこで再び独立し、自分で商品を仕入れて売ることにしたんです。そのときに決めたことが、ただ品物を集めてくるのではなく、環境に意識を向けて作られたものを扱うこと。木製のもの、紙製のものなど循環するエコな素材のものを中心に扱うことにしました」。
しかし、当初はビーチサンダルの扱いは無かった。プラスチックの塊で、環境に決して良いものではないという思いがあったからだ。

そんなあるとき、出向いた展示会で「生分解性」の薬が目に止まった。微生物の働きによって、生分解性でできたプラスチックは、従来品よりも海に流されたあとの環境負荷が軽減されると知った。
「ただ、実は何も真新しい薬ではなかったんです。薬自体は30年ほど前からあり、海外では当たり前のように使われているものだったんですよ。海外では個人の環境への意識が日本よりも高い。オーストラリアでは、サーファーたちの運動を機に生分解性のビーチサンダルが開発、販売されていると知りました。
なぜ日本には生分解性のビーチサンダルがないんだろうと思いましたね。サーフィンをしていると、波打ち際に置いていたサンダルがいつの間にか流されてしまうなんてこともあり、海洋プラスチックごみの問題は切っても切り離せないものです。少しでも環境負荷を下げられるものがあるなら、そうしたものを使っていくべきでしょう。
私は一年のうち、冬場以外はビーチサンダルで過ごすほどのヘビーユーザーでもあります。誰も日本で生分解性のビーチサンダルを作っていないなら、自分で作ってみよう。これが試作を始めるスタートでした」。
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