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「1万歩神話」はもう古い? 歩数の新常識

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ーー歩数に関しては「1万歩説はもう古い」「6,000〜8,000歩程度で十分」という話も聞きますが、実際どうでしょうか?
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歩くことで、座りすぎの弊害から生じるさまざまな病気を防げることは明らかです。ただ、私が懸念しているのは、「歩く」という行為へのハードルが高くなりすぎることなんです。

厚労省も、毎日60分以上(目安は8,000歩以上)の歩行を推奨していますが、大切なのは“誰に向けた目標か”を明確にすることです。

たとえば、普段ほとんど歩かない人が3000〜4000歩でも歩くようになれば大きな前進です。逆に、もともと1万歩近く歩いている人が「6000歩でもいい」と受け取ると逆効果になることもあります。
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まずは「ちょっと多く」を意識すること。そのような段階的で継続可能なアプローチが重要です。

ーー「なんとなく歩く」より「意識して歩く」ほうが効果的とも聞きますが、歩き方の"質"についてはいかがでしょうか?

インターバルウォーキングや歩幅を広めにするなど、さまざまな歩き方によって運動効果を最大化する方法は存在します。

ただし、「20分以上継続しなければ効果がない」などの最短時間や「週3回以上実施しなければ効果がない」などの最低頻度も、あまりこだわる必要はないと訴えたいですね。

ーーかえって行動を起こしにくくなってしまいますもんね。

そうなんですよ。健康増進のために望ましい身体活動量は人それぞれ。社会全体の方向性として、すべての人が少しでも座位時間を減らし、現在の身体活動量を少しでも増やすことを推奨しています。

社会全体で取り組む「座りすぎ対策」の未来

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ーースマートウォッチや歩数アプリも普及していますが、先生ご自身が意識していることがあれば教えてください。

ウェアラブルの活用は大いにおすすめです。可視化は気づきにつながります。最近では座りすぎの注意喚起でアラームが鳴る設定もできますよね。

たとえばオンラインの会議や講義を歩きながら聞くとか、取り入れられる人はなんでも取り入れてみたらいいと思います。私の研究室でも、スタンディングデスクを導入していますよ。

家事や買い物、自転車なども立派な身体活動です。すきま時間に軽く体操をするのも効果的です。

ーー今後、社会全体として「座りすぎ」対策を進めるには、どんな工夫が必要でしょうか?

これは、もはや個人の努力だけで完結する問題ではありません。社会全体が“座らせる環境”を作ってしまっているという認識を持つべきです。

座りすぎ対策は産業化が必要で、健康的で生産性の高いオフィス環境の重要性を強調したいですね。たとえば、スタンディングデスクや適切な照明・空調のあるオフィス、仮眠スペースの導入など、生産性と健康の両立を図るオフィス設計が求められます。

私は、見晴らしのいい窓際で立って働く「新窓際族」という提案をしていますが、そんな仕掛けも含めて、“動ける職場”の設計が今後の鍵になるでしょう。

ーー働き方改革やオフィス環境の改善にもしっかり投資をすべきということですね。

はい。これらの改善が健康経営・ウェルビーイング経営の重要な要素であり、個々の健康を維持し、生産性を向上させることは、労働人口の減少に対応するためにも必要なことだと思います。

ーーAIなど新しいテクノロジーの活用についてはどうお考えですか?

テクノロジーを活用して業務効率を上げ、座る時間を減らすことは有効だと思います。効率化で生まれた時間を、座って過ごすのではなく、少しでも活動的に使えるように意識を変えていくこと。働き方改革と合わせて、人々の意識改革も必要でしょう。


「座りすぎ」が私たちの健康に与える影響は、思っていた以上に深刻だ。しかし同時に、解決策は意外にもシンプルで身近なところにある。30分に1回立ち上がる、階段を使う、コーヒーを入れに行く――。そんな小さな習慣の積み重ねが、未来の健康を大きく変えてくれるかもしれない。

今こそ「座りすぎ」という現代病と向き合い、「立つ・歩く」習慣を身につけていこう。

岡田 圭(Verb)=取材・文 アントレース=編集

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