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毎日オフィスで座りっぱなし。たまの在宅勤務でも、ほとんどPCに向かいっぱなし。仕事が終わればソファでくつろぎ、気がつけば一日の大半を座って過ごしている。そんな40代ビジネスマンは少なくないだろう。だが、この「座りすぎ」には深刻な健康リスクが潜んでいることをご存じだろうか。
特にリモートワークが一般化したコロナ禍以降、世界的にも「座りすぎ」への警鐘が鳴らされている。今回は、早稲田大学スポーツ科学学術院の岡浩一朗教授に「座りすぎ」の実態と、「歩く習慣」の効果について詳しく話を聞いた。
話を聞いたのは……
岡浩一朗先生●早稲田大学 スポーツ科学学術院教授。座りすぎや身体活動に関する研究の第一人者として、厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の策定にも携わる。著書に『「座りすぎ」が寿命を縮める』(大修館書店)、『長生きしたければ座りすぎをやめなさい』(ダイヤモンド社)。
「座りっぱなし」が“サイレントキラー”になる理由
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ーー「座っているだけで体に悪い」と言われても、正直ピンと来ない人も多いと思います。なぜ、座ることが問題なのでしょうか?まず、座ること自体は悪くないんです。問題は2つ。1つ目は一日の総座位時間が長いこと。2つ目は、長時間連続して座り続けていることです。
古くから言われる腰痛や肩こりなどの身体的不調は、これだけ性能の良いイスが普及しているにもかかわらず、多くの人の悩みは解消されていませんよね。これは座り続けるという行為自体に根本的な問題があることを示しています。
さらに、デスクワークなどで長時間の座位の状態が続くと、全身の筋肉のうち70%を占める下半身の大きな筋肉(太もも、ふくらはぎなど)が長時間使われません。
その影響で、血流が滞り血管内皮機能が低下したり、血液中のグルコースを細胞内に取り込むGLUT4や、脂肪を分解する酵素(リポタンパクリパーゼ)の働きも悪くなり、代謝が低下します。
結果、肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常のリスクが高まり、メタボリックシンドロームの状態になります。とくに深刻なのは、これがメンタルヘルスの不調や認知機能の低下にもつながっているということです。
ーー見えないところでもじわじわ体にダメージを与える、と……。まさにそうです。座りすぎは“サイレントキラー”と呼ばれることもあります。これは健康への悪影響が、自覚症状のないまま進行していくからです。
ーー具体的にはどのくらいの座位時間がリスクなのでしょうか?たとえばオーストラリアでの研究では、1日8~11時間座っている人は、4時間未満の人に比べて死亡率が約15%高く、11時間以上になると40%もリスクが上昇するというデータがあります。
世界中のさまざまなデータを総合しても、6時間以上になると死亡リスクが高まり始め、8時間を超えるとさらに急上昇することがわかってきています。
ーー8時間ですか……デスクワークではあっという間に過ぎてしまいそうです。そうですね。だからこそ「現代病」と言えるのです。
座位時間の長さが死亡リスクと関連することは、今では世界的に注目されるようになり、「座りっぱなしは、喫煙に匹敵するリスク」というメッセージも広がりました。
これは10年前ぐらいに使われた言葉で、タバコと比較して同等のリスクという十分なエビデンスはありませんが、それだけインパクトのある健康課題だと伝えるための表現なのです。
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