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すべての写真を見るストーンウォッシュでデニム界に変革をもたらした「ゲス」は、40年の知見を踏襲しつつ、現代社会に即したサステナブルブランド「ゲス ジーンズ」をローンチ。
独自に開発した革新的な低水量テクノロジーのゲス エアウォッシュを介して、ストーンウォッシュの風合いはそのままに、地球に優しいデニムを誕生させた。
使用水量を8割削減しながらヴィンテージの風合いを表現
環境に負のインパクトを与えている実情から、「ファッションは世界で2番目に環境を汚している産業」だといわれて久しい。
国連からは、ファッション業界は「毎年500万人の生存を可能にする9300億㎥の水を使っている」「全世界の廃水の20%を作り出している」「衣料品と履物の製造によって全世界の8%に及ぶ量の温室効果ガスを排出している」「2000年から14年にかけ、倍増する量の衣料品を生産した」と報じられた。
ほかにも、1枚のTシャツを作るのに消費される水量は平均約2700Lとされ、これは平均的な人が3年かけて飲む水の量に相当。製造時に流出するマイクロファイバーは海洋汚染の一因に、などなど、環境に優しい産業とは言いがたいのが実情なのである。
デニムも同様に環境に負荷を与える。1本のジーンズの生産には7500Lの水が必要になるといわれ、これは先述した1枚のTシャツの3倍弱の量。
単純に計算すると、海に似合うTシャツとジーンズのルックスには約1万Lの水が必要になるということだ。自動販売機やコンビニなどで手軽に買える500mlのミネラルウォーターなら2万本ということになる。
ゲス ジーンズ クリエイティブディレクター ニコライ・マルシアーノさん●1996年、ロサンゼルス出身。「ゲス」創業者のひとり、ポール・マルシアーノ氏の実子で「ゲス ジーンズ」の考案者。職務で日々世界を駆け巡る一方、質の高い食事や定期的なワークアウトなど健康的な暮らしを志向する。
現代は環境時代。この状況に触れ、「おや?」と思う人は少なくないだろう。それは米国ロサンゼルス出身のニコライ・マルシアーノさんも同じだった。
ニコライさんは昨年ローンチした「ゲス ジーンズ」でクリエイティブディレクターを務める人物。その彼が中心となり、水の使用量を従来の2割に抑えるサステナブルなテクノロジー、ゲス エアウォッシュを開発したのである。
「ゲス エアウォッシュの最大の利点は、何といっても洗濯工程における使用水量を大幅に削減できるところです。
歴史を振り返ると、『ゲス』は1980年代にストーンウォッシュによる加工技術を開発し、一世を風靡するジーンズを生み出しました。その技術は今もってあらゆるブランドが採用し、『ゲス』のプロダクトもグローバルに支持されています。
しかし輝かしい歴史を築きあげた一方で、常に頭を悩ませていたのが節水問題です。
素材についてはオーガニックコットンに切り替えるなどの対策が講じられてきましたが、水量の削減は何かと代替することで解決する話ではありません。新しい技術を生み出す必要があり、それは非常に難しい取り組みでした」。
2025年6月現在、「ゲス ジーンズ」のリアル店舗はアムステルダム(写真)、ベルリンのみ。そして今夏、3店舗目が東京に登場する。
日本でも昨秋からオンラインで販売され、今年7月に東京・表参道に世界で3番目となる直営店が出店される「ゲス ジーンズ」。だがその製造技術はほんの数年前まで未完成であったのだ。
新技術の開発を手掛けたのは、「ゲス」と長年パートナーシップを結ぶスペインのジノロジア社だ。同社は開発に10年近くをかけて、ストーンウォッシュで使う水を空気と泡とレーザーに置き換え、加工時の石材を不要とし、使用する水量を8割減とするゲス エアウォッシュを実現させたのである。
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