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気づいたときには手遅れ? 家庭での“黙り癖”が生むすれ違い

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—―家庭での“言語化不足”、実際どのくらい深刻なんでしょうか?
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かなり深刻です。でも厄介なことに、夫側がその深刻さに気づいていないケースが多い。心のどこかで「最近ちょっと会話少ないかな」くらいで済ませてしまって、「このままだと離婚されるかも」っていう危機感までは持っていない。ですから、妻との温度差がどんどん広がっていきます。

—―それはかなりこわいギャップですね。危機感がないこと自体が危険です。

そうなんです。話し合わないままの状態が続くと、当然すれ違いが起こります。「たぶんこう思ってるんだろう」と想像で補完してしまうんですね。それがズレていたら、誤解はどんどん深まります。
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実際にすり合わせると、「そんなこと一度も言ってないけど?」となる。しかも昔の発言を「今もそう」と思い込んでいる人も多い。本来なら会話で「違うよ」で済む話なのに、言葉にすることを怠ったがゆえに、大きなすれ違いになっているケースが非常に多いです。

—―“勝手な想像”でどんどん関係がこじれていく。

たとえば「これ手伝おうかな。でも前に怒られたしやめておこう」と思って何もしない。でも妻は「今はむしろ手伝ってほしい」「声をかけてほしい」と思っているのに、それも言わない。これでは、さらにすれ違いが深まってしまいます。

—―お互いが「言葉を省略する癖」で積み重なって、最後まで誤解したまま終わってしまう……かなり深刻ですね。

そうなんです。しかも、妻はもっと前から違和感を覚えていたのに、夫がまったく気づかないまま時間が過ぎていく、ということもあります。やがてどこかで「この人にはもう無理かも」と諦めの気持ちが出てきて、何も言わなくなってしまう。

すると男性は、「何も言われない=うまくいってる」と解釈してしまうんですね。気づいたときには、すでに取り返しがつかない状態に、というパターンですね。

仕事と家庭で必要な「言語化スキル」は別物だった!

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—―そもそも、仕事では言語化できてるのに家庭ではできない。これは、なぜ起こるんですか?

仕事と家庭では言語の「目的」が違うからです。仕事は「売上」や「プロジェクトの達成」が目的ですよね。つまり、「成果を出すための言語」です。

もちろん職場の人間関係も大切ですが、最優先はあくまで「達成」。効率や論理が優先され、感情は二の次です。一方、家庭では「感情の共有」が目的。共感や理解が求められるんです。

—―なるほど。家庭では感情こそがベースでなければならないんですね。

そうです。家庭における言語スキルは「気持ちを伝える」「感情を分かち合う」ためのもの。求められるのは、相手に共感し、理解しようとする姿勢です。この違いを認識しない限り、夫婦のコミュニケーションはいつまで経っても平行線をたどってしまいます。

しかし、ここを混同している方がすごく多い。「仕事でこれだけコミュニケーションがとれてるんだから、俺は言語化できてる」って思ってしまうんですよね。あるいは、「疲れてるし、家では話さなくていいや」と軽視してしまう男性もいます。

—―たしかに。「仕事でできてるんだから、家でも会話できている」と思い込んでしまう男性は多そうです。

家庭で求められるのは「正論」じゃなく「感情のキャッチボール」です。夫婦関係において、「正しい・間違ってる」や「勝ち・負け」を持ち込む必要なんてないんですよ。正論を言えば言うほど、「分かるけど、いまそれを言う?」という気持ちに相手はなっていく。

大事なのは「一旦キャッチする」ことなんです。まずは「へぇ、そうだったんだ」と受け止めてみる。そのあとで、「僕はこう思うんだけどな」と返せばいいんです。先に主張するのではなく、一度受け取る。この“順番”が大事です。

家庭内の会話スキルを極めることは、結果的に仕事にも良い影響を与えますし、プラスでしかありません。ぜひ「家庭と仕事の会話はまったく別物」という意識を持って、言語化力を磨いてもらいたいなと願っています。
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