心を突き動かした現場の言葉

――混沌とした今の時代では、俳優に求められるものも変化しているように感じます。池松さんはどのように思いますか?作品によって役割や使命というのは異なるとは思います。『フロントライン』で小栗 旬さん演じる結城先生の「こんなときのために医者になったんじゃないのか」というセリフは、そのままDMAT全員に跳ね返り、そして自分自身にも向いてきた問いでした。
「こんなときのために俳優をやっているんじゃないのか」と。
その瞬間、この作品に出合えたことが、これまでの自分のキャリアの延長上にあるんだと腑に落ちたんです。DMATの皆さんには、人としての温もりがあり、広い視野がある。特に困難の中でその真価が発揮されていた。彼らは堕落せず、希望を失わず、大衆の中に深く溶け込んだ英雄です。このように僕らの知らないところで世界を修理し、数々の人生を救ってくれています。
俳優が彼らの仕事に敵うものとはまったく思いませんが、役を通じて物語を届け、観客や社会にどんな影響を与えられるのかはいつも考えています。
池松壮亮
俳優。1990年7月9日生まれ。2003年、『ラストサムライ』で映画デビューを果たし注目を集め、その後数々の映画やドラマに出演し、これまで多くの映画賞を受賞している。近年の主な出演作に、映画『ちょっと思い出しただけ』(22)、『せかいのおきく』(23)、『白鍵と黒鍵の間に』(23)、『ぼくのお日さま』(24年)、『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』(24)、『本心』(24年)などがある。今後の出演作として8月にNHKで放送される『終戦80年ドラマ シミュレーション 昭和16年夏の敗戦』が控えており、また2026年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』では、豊臣秀吉役を演じることが発表されている。