禅の世界にも通じる水の原理を表す展示
井植 万博の他の建造物の多くは、半年の期間の後に壊されてしまい、大量のゴミが発生することは避けられませんが、ブルーオーシャン・ドームは「ゼロエミッション」を建物自体で体現しているのが素晴らしいですね。各ドームの展示も拝見しましたが、深く感銘を受けました。
更家 展示について企画、設計を行ったのは、日本を代表するデザイナーの一人で、日本デザインセンターの代表を務められる原 研哉さんです。ドームAは「循環」をテーマに、超撥水素材の上を水が小さな水滴として転がりはじめ、やがて流れとなり、さまざまな「水としての表情」を見せながら循環していく有り様を表現しています。
井植「水ってこんなにも美しく、はかなく、それでいて力強い物質なんだ」と展示を見て感じました。無数の水滴が、まるで蓮の花の上を転がるように動いていき、一つになった流れは、二度と同じ軌跡を描きません。飽きずに見ているうちに、なんだか心が洗われるような気持ちになりました。
昔から仏教における蓮の花は、清らかな心の象徴とされています。蓮の花の上を転がっていく水滴を見ていた古代の人も、同じような気持ちになったのかもしれませんね。
更家 ドームAは、ブルーオーシャン・ドームを訪れた人が最初に入る建物ですが、一種の「禊ぎ」をコンセプトにしています。
神社を訪れた人は、最初に手水舎(ちょうずや)で手を洗って口を濯ぎ、心身を清らかにします。流れる水にはそういう「清める力」があるんですよね。原 研哉さんは無印良品の一連のデザインを手掛けていることで有名ですが、あのデザインにはなんとなく禅のスピリットを感じます。
ドームAの展示物も白い超撥水素材のみで構成されており、水墨画のようにシンプルでありながら、世界の根本にある「水の原理」を表現しています。
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