OCEANS

SHARE

海を汚染し続ける「マイクロプラスチック」

井植 そういえば子供の頃に、赤潮のニュースを見た記憶があります。
advertisement

更家 そんな反省から私たち洗剤メーカーは、なるべく自然の水環境に影響を与えない洗剤の開発を続けてきました。技術の進展の結果、今では低環境負荷の洗剤が主流となり、水環境への影響は大幅に低下しています。

しかし近年になって、海洋を汚染する深刻な原因として新たに浮かび上がってきたのが“マイクロプラスチック”の問題です。

シアター式の空間で圧倒的な映像を視聴することにより、来場者の意識変容を促すブルー・オーシャンドームの“ドームB”。東京、仙台、サンフランシスコを拠点に活動するビジュアルスタジオ・WOWが映像を制作した。

シアター式の空間で圧倒的な映像を視聴することにより、来場者の意識変容を促すブルー・オーシャンドームの“ドームB”。東京、仙台、サンフランシスコを拠点に活動するビジュアルスタジオ・WOWが映像を制作した。


井植 展示でも、非常に大きな問題として扱っていますね。
advertisement

更家 現在主流のプラスチック原料であるポリエチレン、ポリプロピレン、PETなどが発明されたのは今からだいたい100年ぐらい前。本格的に普及したのは1950年代ですが、それから恐ろしい勢いで使われるようになりました。プラスチックの最大の問題は、自然の中にいる微生物によって分解されないことです。

海洋は、人間の活動に伴って廃棄される物質が行き着く「終着点」といえます。世界中で廃棄されたプラスチック製品も、風や雨で河川に流れ込み、最終的に海へと到達します。その過程で、太陽光による劣化や物理的な力で細かくバラバラになり、最終的に5mm以下に小さくなった破片が、マイクロプラスチックです。海洋中を浮遊するマイクロプラスチックは、魚や貝などの体内に取り込まれて、それらの健康に悪影響を与えています。

またクジラやウミガメが、ビニール袋をエサのクラゲと間違えて食べてしまうケースも多数確認されています。



井植 環境省によれば、毎年約800万トンものプラスチックごみが海洋に流出しているとされています。日本は比較的ゴミ処理を行なっていると言われていますが、プラスチックのリサイクル方法として熱処理に頼っているところが大きいんです。これではCO2排出という別の環境問題につながりかねません。その大気中に排出されたCO2は海に落ちて海水の酸性化、酸性化による海洋生物へのダメージへと、果てしなく負のスパイラルが続くとも言われています。

更家 マイクロプラスチックは海洋生物だけでなく、人間の体にも深刻な影響を与えているという報告があります。オーストラリアのニューカッスル大学の研究によれば、現代人は食生活を通じて微粒子化したプラスチックを、毎週クレジットカード1枚分も体に取り入れているそうです。

井植 更にはナノプラスチックと呼ばれる、更に細かいプラスチックの存在も問題視されていますね。これは人体の血液中にも存在することが確認されたという論文も発表されています。
3/3

次の記事を読み込んでいます。