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同じ想いの「パートナー」が集まる場へ


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更家 現時点では私たちの会社も、商品の生産流通を通じてプラスチックを使用せざるを得ませんが、少しでもこの状況を改善していかなければなりません。

そんなことを考えていたとき、海洋プラスチックの問題を帆船による航海を通じて世界に訴えている「レース・フォー・ウォーター」というスイスの団体と知り合ったんです。2018年のことですね。彼らはスイスの起業家マルコ・シメオーニさんという人が中心となり、2015年から1隻のヨットで世界17か所を横断しながら、海洋プラスチック汚染に関する調査を行っていました。

我々はその日本における活動をサポートしようと決めて、東京2020オリンピックに合わせて日本の港に寄港してもらおうと考えたのですが、その計画が、コロナ禍ですべて白紙になってしまったんです。
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井植 私も2020年9月に、レース・フォー・ウォーターのソーラーエネルギーで航行するクルーザーが日本に寄港した際、乗せていただきました。クルーから世界中の海を目視してきた状況のご説明を受け、サラヤさんの緑色の旗も掲げられていたのが印象的でした。コロナ禍での対応の変更は残念でしたね。

レース・フォー・ウォーターのクルーザー。緑色のサラヤの旗が掲げられている。

レース・フォー・ウォーターのクルーザー。緑色のサラヤの旗が掲げられている。


井植さんが視察した際の様子。クルー自らが世界航海におけるプラごみの様子を説明してくれたそう。

井植さんが視察した際の船内。クルー自らが世界航海におけるプラごみの様子を説明してくれたそう。


更家 ところが怪我の功名といいますか、そんなタイミングで「2025年の大阪・関西万博に出展しませんか?」という話をいただいたんです。万博という催しは、ひとつの場所に世界中の人々が集まる、またとない機会です。日本および世界の人に、マイクロプラスチックの問題について知ってもらうには、これ以上のチャンスはありません。それで「万博に出ようや」と決めたというのが、ブルーオーシャン・ドーム出展にいたった流れです。

井植 コロナ禍で計画が白紙になったのが、結果的に万博出展につながったわけですね。それにしてもサラヤ株式会社ではなく、「ゼリ・ジャパン」としてブルーオーシャン・ドームを出展された理由はなんだったのでしょうか?



更家 ゼリ・ジャパンの名前は、「Zero Emission Research and Initiative」、すなわち廃棄物をゼロにするための研究と活動を目的とするところから名付けられています。大阪・関西万博にサラヤ一社の単独出展ではなく、ゼリ・ジャパンとして出展したのは、このコンセプトに共鳴して一緒に取り組みを始めてくれる“仲間”を、この場に結集させたいという思いが理由です。

もともと自然界には、「廃棄物」という概念そのものがありません。生命活動に使われたすべての物質は、自然のなかで循環し、他の生き物の生命をつないでいきます。

しかし、そこに人間が入り込むと、循環が乱れてプラスチックのような廃棄物が生まれてしまうわけです。ゼリ・ジャパンの理念である「自然に倣え」に従って、自然環境で分解される新たな材料開発などを通じてサステナブルな社会の構築をともに進めるパートナーと、この場でぜひ出会いたいと思っています。

井植 とても素敵な理念だと思います。「同じ志を持つ仲間との出会いの場、つながる場を提供したい」という更谷さんの思いは、万博開催前から、私たちステークホルダーを中心に、確実に伝わり、広がっています。このパビリオンと展示についても、詳しくお聞かせください。


海の汚染は、すべて陸から始まっているとも言われている。「マイボトル」を持参するとか、小さなことからでも良い。海を守るために我々も日々の生活を見直していこうではないか。

濱田智則=写真 大越 裕=取材・文

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