脂漏性湿疹を発症しやすい習慣って?
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――ところで、実際の生活にフォーカスしていくと、どんなところに脂漏性皮膚炎を引き起こしやすい習慣があるんでしょうか?考えられるのは主に次のような習慣です。当てはまっていないか確認してみてください。
①皮脂分泌の多い場所を洗いきれていない
脂漏性皮膚炎の出やすい代表的な部位は頭皮や顔ですが、じつはそれ以外にも、脇・胸毛まわり・おへそ、さらには脚の付け根や肛門などのいわゆる陰部も皮脂や特殊な汗の分泌は多いんです。
一説によると、まだ人間が動物だった頃、繁殖行動のためのフェロモン分泌に関わっていた器官が前述する部位に多く存在し、そこから分泌される汗や皮脂が特に脂漏性皮膚炎とかかわりが深いとされています(諸説あり)。
こういった部位は通気性が保ちにくく皮脂が溜まりやすいのですが、洗いづらい部位でもあるため、日常的にしっかり洗いきれていない方が実はけっこういるんです。そうするとやはりマラセチア菌が繁殖しやすくなってしまい、炎症を起こしやすくなります。
②逆に洗いすぎている
「洗いきれていない」という問題の真逆で、「洗いすぎて皮脂分泌が過剰になっている」というケースも非常に多いです。これは圧倒的に頭皮と顔に多く、洗いすぎは現代病の一つとも考えられています。
本来皮脂には肌の乾燥を防ぐ役割や、微生物が侵入して感染を起こすのを防ぐ役割があるのですが、頭と顔に関しては、洗う頻度や強度がほかの部位よりも高いですよね。シャンプーも洗浄力の強いものを好んで使っている方も多いですし、洗顔も朝晩2回する方が多いと思います。
そうすると必要以上に皮脂を取り去ってしまい、かえってさらに皮脂分泌が活発になってしまうことも。体を清潔に保つことは大切ですが、洗いすぎは逆効果ということも覚えておきましょう。
ただし、洗いすぎを避けるために顔を洗わない方が良いという解釈は極端で、むしろ回数はしっかり洗っても、洗浄力が強すぎない洗顔料で適切に洗うという考え方が正解に近いと思います。
③間違ったスキンケアをしている
男性もスキンケア用品を使うのが当たり前になりましたが、正しい使い方や自分の肌にあったものが分からず、トラブルを招いているケースもよくあります。
例えば化粧水だけ塗ってそのあとに保湿をしていなかったり、逆に「保湿=油分」だと思いすぎて、油分の多いものを塗りすぎていたり……。こういったことでますます皮膚の乾燥が進行したり、皮脂が過剰になってしまうこともあります。
④脂肪の摂りすぎ・メタボぎみ
脂っこい食事、特に動物性脂肪を多く摂ると皮脂が出やすくなります。また、メタボ傾向で体脂肪を溜め込んでいる方は、体内で炎症物質を出しやすくなっており、慢性炎症に関わる疾患を起こしやすいベースとなりうる可能性が指摘されています。食事や生活習慣に関しては、40代前後の男性が特に気をつけるべきポイントともいえるでしょう。
⑤ビタミン不足
一般的にビタミンBが不足すると皮脂の分泌がアンバランスになるといわれています。日常的に野菜などを食べる習慣があればさほど影響はないですが、やはり偏った食生活でビタミン不足になると、皮脂のコントロールにも不調をきたすことがあります。
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――思い当たるものもあってドキッとしました。一つひとつ見直さないと……。そうですね。生活習慣や食生活を見直すと同時に、やはりマイクロバイオームのバランスを保つためには免疫力の安定が欠かせません。
まずは、質の良い睡眠を確保しましょう。睡眠時間を長く取れない場合でも、寝る前に部屋を暗くしたり、寝酒を避けるなどの工夫で「睡眠の質」を向上することを意識してみてください。
また、意外なところでは紫外線予防も効果的です。紫外線は免疫を低下させる作用があり、人によってはヘルペスができることも。男性も日焼け止めを使うことが増えてきましたが、顔だけでなく首の後ろや耳の裏側など、露出している部分にしっかり塗ることが重要です。
――ちなみに、できてしまった炎症を悪化させてしまうNGな行為はありますか?男性に多いのですが、タオルで体をゴシゴシ洗ったり、爪を立ててガシガシとシャンプーするのはやめましょう。爽快感が優先されているようなスクラブ入りの洗顔料もおすすめできません。本来、皮脂は手のひらや指の腹で洗うだけでも、十分汚れを落とすことができます。
――そういえば、熱々のおしぼりでゴシゴシ顔を拭くのが好きなんですが、これはどうですか?あまり良くないですね。熱々のおしぼりは急激な温度変化を肌に与えるだけでなく、タオル生地が肌に擦れてしまい、刺激が強すぎます。顔の皮脂を一気に拭き取りたい気持ちは分かりますが、お手洗いで温水で顔を洗って、紙タオルで軽く押さえる方が肌には断然優しいです。
「ゴシゴシしない」「優しく扱う」というのは頭皮に関しても同じです。ブラッシングの時に頭皮に強くあてて掻くようにしている人は気をつけてください。特に、すでに炎症やフケが出ている人は、ブラシで刺激を与えることでさらに悪化することがあります。
――顔も体も頭皮も、とにかく優しく扱うことが共通して大切なポイントですね。はい。ちなみに炎症があるときは、パーマやカラー、白髪染めは避けましょう。程度や成分にもよりますが、頭皮には少なからず刺激になります。頭皮の状態が良くなってからにした方が、症状が長引きにくいです。
また、頭皮にかさぶたができてきた場合、無理に剥がすのもNGです。かさぶたがあるということは、その下にまだ新しい皮膚が完成していないという証拠。その状態で無理に取ってしまうと、未熟な皮膚やキズが露出して、さらに悪化してしまうことがあります。かさぶたが自然に剥がれるまで待つのがベストです。
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