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ミドル世代になってくると特に悩みを抱える人も多い、肌や頭皮のトラブル。
自分自身や周囲の人も含め、「おでこや小鼻が赤みを帯びてテカっている」「生え際あたりに白っぽいフケがある」という症状が現れていたりしないだろうか?
じつはコレ、40代以上の男性に多いとされる「脂漏性皮膚炎」という病気のサインなのだそう。いったい、どんな病気なのか? 成増駅前かわい皮膚科の河合徹院長にくわしく話を聞いた。
聞いたのはこの人!
河合徹先生●成増駅前かわい皮膚科院長。2014年に東京大学医学部皮膚科学教室入局後、東大病院を中心に、大手企業内診療所や総合病院などあらゆる現場での診療経験を持つ。日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医。日本レーザー医学会認定 レーザー専門医。日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医。成増駅前かわい皮膚科https://kawai-hifuka.jp
脂漏性湿疹のメカニズムと特徴とは?

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――早速ですが「脂漏性皮膚炎」とは具体的にどういったものなのでしょうか?脂漏性皮膚炎とは皮膚の炎症性疾患の一つで、特に皮脂の分泌が多い頭皮や髪の生え際、顔などで起こりやすいとされています。一般的には、赤みやかゆみ、フケなどが伴うことが多く、放置すると炎症が広がって慢性化してしまうこともあります。
かゆみは自分自身が負う物理的なストレスですが、フケなどは他人に与えるイメージにも影響しますし、そのせいでメンタル的に悩まれてしまう患者さんも結構多いんです。あとは正常なヘアサイクルが保てず、抜け毛が多くなるといったケースも見受けられます。
――なかなか放っておけない症状ですね。皮脂が多い場所をケアしないと、こういった症状に繋がるんでしょうか。皮脂のコントロールは重要ですが、実際にはそれだけが原因ではなく、皮膚の常在菌のバランスや生活習慣、ストレスなどが複合的に関係しています。
じつは「脂漏性」という言葉自体、少しミスリードされやすいものなんです。
その名前から「脂っぽい肌が原因だ」と考えて、とにかく顔や頭皮のベタつきがなくなるまで洗い落とそうとする患者さんもいるのですが、原因の本質を突かないと正しい対策にならなかったり、かえって症状を悪化させることもあるので注意が必要です。
――なるほど、名前から想像するものとは少し違うのですね。では、どういったメカニズムで発症するのかくわしく教えてください。要因の一つとして、皮膚の「マイクロバイオーム」のバランスが崩れることが挙げられます。マイクロバイオームとは、皮膚の表面に常在する菌(微生物)たちのことで、私たちの皮膚の健康を保ちながらバランスをとって共存しています。
しかし、このバランスが崩れると、特定の菌だけが過剰に繁殖し、それが原因で皮膚に炎症を引き起こすことがあるんです。
――マイクロバイオーム、あまり聞き慣れない言葉ですね。具体的にはどんな微生物が脂漏性皮膚炎に関わっているんですか?主に「マラセチア菌」という、真菌(カビ)の一種です。
この菌は人間の皮脂をエサにして増殖する菌で、通常は問題を起こさないのですが、皮脂の分泌が過剰になると増殖を広げ、その過程で作られる物質が皮膚を刺激して炎症やかゆみの原因になるといわれています。
――炎症やかゆみが発症しないように、どんなことに気を付けたらよいですか?皮脂の出方は体質によって人それぞれですが、40〜50代の男性に脂漏性皮膚炎の患者さんが多い傾向がありますので、年齢によるものも影響しています。
また、乾燥シーズンを抜けて天気が暖かくなると、汗や皮脂の分泌が増加し、皮膚トラブルの温床になりやすく、これからの季節は特に注意が必要です。
特に気をつけたいのが、免疫力の低下です。
疲れや寝不足によって免疫力が落ちているときは、微生物たちにとって好き放題に増殖するチャンス。お互いの陣地を取り合うかのようにして、常在菌のバランスが崩れやすいのです。その結果、炎症が起きて赤みやかゆみとなり、掻いてしまうことでますます湿疹を悪化させる、という負のサイクルに陥りやすいです。
――なるほど。脂漏性皮膚炎は、年齢や季節、免疫力の低下などによって皮脂と菌のバランスが崩れることで発症するということですね。 2/3