OCEANS

SHARE

  1. トップ
  2. ライフ
  3. 「離婚届が妻のタンスの中に……」突然の離婚危機、回避する方法を精神科医・名越がアドバイス

2025.04.07

ライフ

「離婚届が妻のタンスの中に……」突然の離婚危機、回避する方法を精神科医・名越がアドバイス



「オトナ生活相談室」とは……

精神科医・名越康文さんが、40代のさまざまなお悩みを解決する本連載。

今回届いた相談事は、突然の離婚問題。特段不仲でもない夫婦が直面した離婚の危機に、どう対処するべきか。名越先生がずばりお答えします!
案内人はこの方!
名越康文●1960年奈良県生まれ。精神科医。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪精神医療センター)にて精神科救急病棟を設立、1999年に退職。臨床に携わる一方、テレビやラジオでのコメンテーターやコラム執筆など、多方面で活躍中。相愛大学、高野山大学、龍谷大学客員教授。近著に「とげとげしい言葉の正体はさびしさ 5000人のカウンセリング経験から得た精神科医の知見」(夜間飛行刊)。

名越康文●1960年奈良県生まれ。精神科医。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪精神医療センター)にて精神科救急病棟を設立、1999年に退職。臨床に携わる一方、テレビやラジオでのコメンテーターやコラム執筆など、多方面で活躍中。相愛大学、高野山大学、龍谷大学客員教授。近著に『とげとげしい言葉の正体はさびしさ 5000人のカウンセリング経験から得た精神科医の知見』(夜間飛行刊)。


【Question #09】妻が離婚を考えているようです。特に思い当たる原因もなく、どうすればいいのでしょうか?


最近、ふとタンスの中に離婚届を見つけてしまいました。特に喧嘩をしたわけではなく妻は普段通りで変わった様子もありません。僕はどちらかというと真面目で、お酒もほどほど、タバコやギャンブルもやらず、浮気なんてもってのほかです。正直離婚したい理由が思い当たらないので途方に暮れています。どうすればいいでしょうか?(48歳・神奈川)

【Answer】フレンドシップ・タスクをもう少し肉付けしてみてはいかがでしょうか。


advertisement

ちょっと変な表現になることをお許しくださいね。このケースはやや“偵察”が必要な気がします。偵察といっても相手の後をつけて回るわけではなく、会話をするときに、奥さんが自分との会話に集中しているか集中していないかとか、自分に建設的な態度を見せてくれるかなど、日ごろの様子をちょっと立ち止まって観察してみるのです。

すごく定型的な前提から始めると、このご家族は、夫は夫、妻は妻という領分や役割分担はできていて、何年も特に何も問題はなかったんだと思います。でも、それらは生活を守り家の中を回していくためのワーク・タスクですよね。



ワーク・タスクは夫婦関係に欠かせない重要な課題のひとつですが、それだけでうまくいく家族もあれば、それだけでは足りない家族もあります。

これに対してフレンドシップ・タスクとは、文字通り「友情」や「友愛」のための課題のことです。夫婦の間だってこのフレンドシップのタスクは存在します。夫婦で趣味を共有して一緒に楽しむとか、景色や映画、同じものを見て感情や情緒を共有するとか。

そういうところが、この方の場合どういう経過があったのかということは一応振り返っても良いのです。

例えば、どんな映画が好きなのか、あるいはどんな演劇が好きなのか。あるいはスポーツや旅行なのか。絵が好きだったら、どんな絵が好きなのか。花が好きなら、どんな花が好きなのか。どんな小説が好きなのか、それを自分も読んだことがあるのか。奥さんが好きなことを、一緒に楽しんでやったことがあるのか……。いやいや、お互いに忙しい身ですから、そのうちの一つでも二つでも十分なのかも知れません。

これは僕の勝手な推測ですが、奥さんは「夫は自分に興味がないのかな?」と思っている可能性もあると思います。

もしも、奥さんの興味のあることに関心をもってこなかったというのであれば、旅行でも一緒に行くとか、ワーク・タスク以外のことで何かしら行動を共にしてみてはいかがでしょうか。



その際、奥さんの行きたいところに「連れて行く」という感覚ではなく、奥さんの行きたいところに行って「自分も一緒に楽しむ」という感覚をちょっと持ってみるとか。

一緒に共有する時間というものを、自分の人生の中でどれだけもてるか。そういうことをふたりの人生の中でチャレンジしてみてはどうだろうかと思います。

そうやってフレンドシップ・タスクを肉付けして、一緒に心身が共振する機会が増えると、必ずではないけれどそこからラブ・タスクが花開くこともあります。そういう戦略を3カ月くらい試してみませんか?というのが僕からの提案です。



「今まで聞いたことなかったけど」みたいな感じで奥さんの興味があることを聞き出してみると、こういうものに恋焦がれていたんだとか、おそらく知らなかったことがいっぱい出てくると思います。

どうやって聞き出したらいいかわからないという場合は、奥さんを外食に誘ってみるのも一案です。ちょっと素敵なレストランなどに誘ってコース料理でも食べながら、1時間半くらい非日常の場面で質問をすると、意外な答えが返ってくることがあるものです。



「そういえばこの間、友達と美術展行ってくるって言ってたけど、絵が好きなの? ごめんね、今まで仕事とか子どものこととかでバタバタしてて気がつかなかった」などと言われたら奥さんもきっとうれしいと思うし、今まで話したこともなかった自分の趣味などにあなたが気づいてくれたら、それだけでものすごく可能性が広がる気がします。

名越先生の公式Xはこちら!

達 弥生=取材・文 アントレース=編集

SHARE