
だがレッドウィングに詳しくなかったことが、社長に就任してから現在にいたる快進撃を生むこととなった。
「ミネソタ州にあるレッドウィングという街には120年前にできた本社や工場が今もあって、職人さんの手で丁寧に靴を作っています。長く履くことを想定してデザインしているので、修理がしやすいような仕様になっていて。
また原皮は靴用に仕入れ、皮膚の状態から靴に合った革を選んで靴用に鞣すのですが、それも自社で行っているんです。だからレッドウィングは革質が高い一方で、リーズナブルな価格設定が可能なのです。
私が社長に就任した当時、多くのお客さまは90年代に一世を風靡した情報は知っていても、私が知っている、こうしたブランドの魅力を知らないことに気付いたんです。
それからは根本的な価値をもっと知ってもらいたくて、YouTubeなどSNSを駆使して発信し続けています」。
今年はブランド創設120周年を迎える節目の年。代表としての今後のビジョンについて訊いた。
「レッドウイングが70年代に日本で流通が始まり、80〜90年代に認知されて以来、ずっと愛され続けていて本当にありがたいです。
今後はファッションアイテムとして選ばれるだけでなく、新たなことにチャレンジしたい、または頑張りたいときに選ばれるブランドになりたいです。
老若男女、国籍、職業などを問わず、レッドウィングのブーツを履くことで自信が湧いてくるといいますか、挑戦者の可能性を広げてくれる存在。概念的で見えない価値観ですが、この理念が世界中に広がってほしいです」。
取材後の雑談では、小林社長が履いているブーツの話題になった。
「これは『クララ』というモデル。繊細な雌牛の革で仕上げているので、履き続けることで自分の足型にフィットするんです。ぜひ、女性の皆さんに履いていただきたい」。
「あと個人的には」と前置きをしつつ、レッドウィングの魅力について語った。冒頭と同じく、きらきらとした笑顔を浮かべながら。
「レッドウィングのブーツを履いていると安心するんです。だって、120年も変わらずに“あるべき姿”をずっと貫いているじゃないですか。
そういう確固たるポリシーに足が包まれている感じがして、不思議と“自分らしさ”を意識させてくれるように感じるんですよね」。
小林由生●レッドウィング・ジャパン代表。2006年にレッドウィング・ジャパンのスタートアップメンバーとして参画。その後、さまざまな要職を歴任し、20年より現職に。アジア統括ディレクターも兼任している。レッドウィング・ジャパン公式ホームページ内にて小林社長の連載記事がスタート。
OCEANS 4月「これが“本当のラグジュアリー”」号から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック!