③ 聖地の味に負けない! “東京発”の傑作「薬膳スープカレー・シャナイア」

マジスパによって切り拓かれた「スープカレー・ブーム」。
東京でも起業する店が続出しましたが、ことごとく短命で終わってしまいました。というのも「ただ水で薄めたカレー」といったレシピが多く、本家本元とはまるで別物。
マニアたちも「やっぱりスープカレーは札幌じゃないと無理だね」と囁き合っていましたが、2012年、革命が起こります。
恵比寿の高級住宅街、そのど真ん中にとんでもないお店がオープンしたのです。それこそが「薬膳スープカレー・シャナイア」。
店は、恵比寿と目黒のちょうど間の奥まった路地裏にある。
2011年からスープカレーの移動販売をしていた田部井 淳さんによる、満を持しての固定店舗です。
私は当時偶然にも、お店から徒歩10分ほどの距離にある会社で働いていました。同僚に「スープカレーのお店ができていたよ」と誘われて訪れたのですが、「こんな奥まった場所、普通は見つけられないよ!」と驚いたものです。
猫がモチーフになっている。スープカレーの食べ方も猫がナビゲート。
食べてみてまたびっくり。
本当に「えっ、何⁉」と目を見開いてしまったくらい、研ぎ澄まされた味わいなんです。東京どころか、聖地である札幌でも絶対に人気店になれるクオリティ。
しかも行くたびにぐんぐん美味しさが増していくという、なんとも底知れぬお店です。
「チキンと野菜のスープカレー」1450円。オリジナルスープ、6辛(5辛+粗挽き唐辛子)+50円、寝かせ玄米+100円、普通盛り200g。
札幌のスープカレーが「北海道の食材」という最高のアドバンテージを活かしている一方、シャナイアの強みは「きめ細やかな調理の工夫」。
例として、看板メニューの「チキンと野菜の薬膳スープカレー」を紐解いてみましょう。
チキンレッグは黒酒に一晩漬け込んで旨みを増幅させ、骨の髄まで齧れるほど煮込んでホロホロに。12種もの旬の野菜も、素材に応じて調理法を変え、もっとも美味しい食感を追求。
バジルと生薬が鮮烈に効いた、どこまでも奥深く、なおかつ味の輪郭がはっきりとしたスープといい、フレンチシェフとして腕を磨いた経験が美しく結実しています。
「薬膳」という札幌スープカレーの根っこは継承しつつも、北海道発に依存しない。“東京でしか食べられないスープカレー”という、誇り高いひとつの完成形を見ました。
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2024年末から2025年初頭にかけて、スープカレー・シーンはますます盛り上がっています。
名古屋に超ハイクオリティな「スープカレーISHIBA」が登場したり、大阪発のカジュアルな名店「札幌スープカレーJACK」が東京・市ヶ谷に進出したり……。始まりの地・札幌でも、すすきの等の歓楽街で呑んだあとの「締めスープカレー」の専門店が人気を博すなど、ホットトピックが絶えません。
そこには「ご当地カレー」が全国に、そして世界に愛されるためのヒントも眠っているに違いありません。
スープカレーの圧倒的認知度と勢いは、日本のカレー界のこれからを明るく照らしてくれるはずです!
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