② エンタメ性抜群のパイオニア「マジックスパイス」

いよいよ出ました、マジスパこと「マジックスパイス」。たびたび触れてきたとおり、「スープカレー」と命名して一大ブームを巻き起こした立役者です。
創業者の下村泰山さんは、かつてUFOに誘拐されたことがあるという、ぶっ飛んだ経歴の持ち主。非常にエネルギッシュで、二人のお子さんが幼かった頃から、ご家族で世界中を旅していたそうです。
特にアジアの屋台巡りが大好きで、帰国後、その味を泰山さん自ら再現するのがルーティーンだったとか。そんななか、泰山さんご家族はインドネシアの屋台で衝撃の出合いを果たします。「ソトアヤム」という滋養スープで、口いっぱいに鶏の旨みが染みわたり、体がぽかぽかと元気になる。
辛い物好きな泰山さん一家は「これをベースに香辛料を足していけば、究極のスープができるのでは?」とひらめいたわけです。
そして完成したのが、マジスパの味を支える「チキンベース」。そう、ソトアヤムというスープが素地にあるからこそ「スープカレー」と名付けられたのです。
「チキン」1420円。スープ:チキンベース(ソトアヤム)、辛さ:涅槃+280円、モモ+360円。
チキンレッグと干しエビをじっくり煮込んだチキンベースは、お茶漬けにも通ずる心落ち着く味わい。そこに「覚醒」~「虚空」の7段階で辛さを加えていくスタイルです。
激辛チャレンジで有名なマジスパですが、あえて辛さレベルの低い「覚醒・瞑想・悶絶」あたりでスープの滋味を堪能するのも一興。
もちろん、「涅槃」以上に挑戦して、舌も身もキリリと引き締まる辛さにシビれまくるのもまた一興です。
こうした高いエンタメ性とサイケデリックな世界観、泰山さんの強烈なキャラクターも相まって、マジスパは「スープカレー」の名を札幌から全国に轟かせます。
その勢いにのって2003年、下北沢へ進出。
今やすっかり「カレーの街」として知られている下北ですが、当時の専門店は「茄子おやじ」の一軒のみ。
ところがマジスパの上陸以降、「後に続け!」とさまざまな趣向のカレー店が集結していきました。東京にカレーカルチャーの磁場を作ってしまったという、なんともあっぱれな功績です。
下北沢店は「マジックスパイス東京御殿」として2024年に移転リニューアル。レインボーのスプレーアートが躍るギラギラした外観からして、演劇や音楽などサブカルチャーの発信地である下北にこれ以上なくマッチしています。

移転してさらにパワーアップしたマジスパの東京御殿。
センターテーブルには巨大ガネーシャが鎮座し、その上ゆっくり回転する……。さすがUFO帰りの泰山さん、怖いものなしです(笑)。
センターテーブルに陣取るガネーシャ像。
とてつもなく異世界なようで、実は原点は「家族旅行から生まれた味」。マジスパのスープカレーは、日本一派手な家庭料理なんです。
泰山さんの愛娘で歌手の一十三十一(ヒトミトイ)さんがお店でライブを開けるよう、広々とした設計にしているという裏話もアットホーム。
息子にして新店長のイッペイ・スカイウォーカーさんによる、更なる味の進化も見逃せません!
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