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金運UP! に渡りに舟の「財布」たち
いよいよ『Not Like Us』を披露。「Not Like Us」とは「奴らは俺らとは違うんだ」という言葉のニュアンスを持ち、黒人と白人の違いを訴えている。「US」は「アメリカ」という意味にもなるので、「こんな問題だらけの状況は本当のアメリカじゃないはずだ!」という訴えでもある。
一見人種差別による「分断」を促しているように見えるが、実は「アメリカで生きる黒人の功績を認め、真の平等に向かおう!」という政府への訴えなのである。
強い意志を保ったまま『tv off』につながっていくが、曲のタイトルは文字通り「テレビを消せ」という意味だ。
これは冒頭の「これは革命だ」発言の伏線回収であると同時に、オマージュしているギル・スコット・ヘロンのタイトル『革命はテレビ放映されない』とも結びついている。
このショーが革命でもあるが、本当の革命はこのショーが終わったあとに起きるぞ! という暗示でもある。実際、ショーの最後に「テレビを消せ!」と連呼しながらリモコンを消す動作をしてショーは終了。最後にはモニターに扮する観客席に「GAME OVER」の文字を浮かべたのである。
このゲームをプレイさせられていたのは政府なのか、ケンドリックなのか、はたまた観客の我々なのか? その問いを突き付けて終わらせる粋な計らいである。
私の解釈としては「政府の思惑通りに生きず、黒人というルーツに誇りを持て!」という黒人コミュニティへのエールであると共に、アメリカに生きる国民全員に対しても「お互いの文化を理解し合いながら生きて行こう!」というメッセージだと思っている。
多人種国家であるアメリカならではの描写だが、アメリカで最も観られるショーでのケンドリックのパフォーマンスに対しては、案の定賛否という名の分断が起きている。
「革命を起こす」と宣言したケンドリックの思惑通りなのか? 相変わらず政府が仕掛けてきたゲームの支配下にあるから起きている分断なのか? すべての判断はそれぞれのプレイヤーに委ねられるのだ……。
いかがだろうか。ぜひ、このケンドリックのストーリーを知った上で、もう一度ハーフタイムショーをお楽しみいただきたい。