各曲の持つメッセージが演出に重なる
次の曲『squabble up』は「構えて喧嘩しろ」という敵に対して使うスラングであり、まさに政府に対して喧嘩腰でスタートするのだ。
そんな曲を聴いたアンクル・サムは案の定、「なんだ今のは!? うるさすぎる! 狂暴過ぎる! ゲトー過ぎる! お前はゲームの遊び方もしらないのか?」と、早速注意という名のコントロールをしてくるのだ。
それを受けて次に披露したのが『HUMBLE.』、直訳すれば「謙虚」という曲である。つまりここではアンクル・サムの注意に従ってしまったのである。
ステージ上では赤、白、青の服に身を包んだダンサーたちがアメリカ国旗の形を取るも、国旗は真ん中で分断されている。
これは言うまでもなく「政治や宗教、人種などさまざまな理由で分断したアメリカで、1人の黒人としてゲームをプレイしている」描写でもあるが、国旗をかたどる黒人ダンサーたちが奴隷制度を思い起こさせたり、さまざまな形をとってアメリカ内で生きる黒人社会の歴史も表している。
次の曲『DNA』には「俺のDNAの中にある黒人というルーツを誇りに思うことは忘れちゃいけない!」という強い思想が込められている。その次曲、『euphoria』は元々ドレイクに向けたディス曲だが、この場でラップをするために抜いてきたリリックも、“ゲーム”というテーマにちゃんと沿っている。
最新アルバムのタイトルでもあるアメ車「GNX」の上でラップを披露するケンドリック・ラマー。この日着用していたデニムは「セリーヌ」。
次の曲は『man at the garden』。ここでは黒人であるせいで、ほかの国民が持つ権利を同等に享受できない点について、アメリカ政府に指摘する内容である。つまり人種差別に基づいた人権の違いだ。
再びアンクル・サムが登場し「おいおい、仲間を連れてきたみたいだけど、それはチートコードだ! スコアキーパー、1点減点せよ!」と発言。ここの減点も、ゲームを意識しながらも「刑務所へ送る」と「命を取る」を比喩したものである。
「仲間たち」はもちろん「ギャング」という黒人のステレオタイプをイメージしている。だが、それ以上に、白人よりも黒人が逮捕されやすいこと、重い刑を科せられる確立が高い社会問題を意識している。
自身のDNAに誇りを持って想いのままに生きると、アンクル・サムに減点という名の刑罰を喰らってしまうのだ。
次の曲『peekaboo』では「黒人同士の殺し合い」という社会問題を描写している。内容も黒人同士が殺し合う状況を描写している曲であり、アメリカ政府がその問題を解決しようとせず放置していることを訴えているのだ。
3/4