「セカンドキャリアのリアル」とは……「どちらのキャリアが“セカンド”なのか……。転職したわけじゃなくて、2つの道をずっと並走してきたんですよね。記事は好きに書いてもらっていいですよ」。
東京・中野で理容室を営み、依頼があればトラブルの仲裁役もする。過去には、犯罪を未然に防ぎ“素人捜査員”として報じられたこともある。
理容師と人助け。不可思議な二足の草鞋を履く日下鉄也さん(38歳)が、今回の主人公。早速、彼のキャリアを探っていこう。
【写真10点】「『逮捕されても悔いはない』。深夜営業の理髪店オーナー(38歳)が人助けに命をかけるワケ」を写真でチェック 話を聞いたのはこの人!
日下鉄也●理容師歴18年、セキュリティ歴14年。理容の経営コンサルや防犯ボランティアチー厶の立ち上げや指導等を行う。
「東日本大震災で、人生のスイッチが入りました」

日下さんが東京・中野にバーバーショップ「バックアレイ」を開業したのは、2023年10月のこと。2年目になる現在、夜20時から朝7時までというニッチな営業体制で顧客を掴み、木曜と金曜に限っては24時間営業というハードスケジュールをこなす。定休日も設けていない。
「若い頃から格闘技をやっていて、山本KIDさんに憧れてました。真剣にプロを目指した時期もありましたが、『何か資格くらい取っておけ』と親に説得されて、地元・仙台の専門学校で理容師の資格を取得したのが20歳のときです。
卒業後は仙台の小さい理髪店に就職して4年間勤めました。プロの道は諦めたものの格闘技はずっと続けながら、地元をなんとなくぷらぷらしながら過ごす。そんな日々でした」。

2011年3月11日、日下さんの人生を変える出来事が起きる。多くの人生を一変させた、東日本大震災だ。24歳だった当時をこう回顧する。
「仙台市の自宅は内陸部にあったので津波はこなかったし、幸い、家も倒壊しませんでした。だけど、もっと生きたかったであろう人たちが、たくさん亡くなった。その事実は今でも忘れられません。
誰しも人生のスイッチが入るタイミングってあると思います。それが僕にとっては震災だった。こんなことを安易には言えませんが、『死んだっていい』。そう思えるくらい命をかけて生きてやろうと、覚悟を決めた瞬間でした」。
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