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努力の末に行列店になるも、閉店を余儀なくされる

しかし、粘り強く営業を続けていくと、少しずつ口コミが広がるようになり、徐々にお客さんが増えていった。その後行列ができるようになったが、駐車場問題で近隣からクレームが出るようになり、従業員の問題も重なって、閉店を余儀なくされる。

「私は地域貢献のために『サンジ』を作りました。しかし、行列や駐車場問題で心が折れました。近隣の人たちに必要とされていないお店だったんだと思いました。親父と言い合いをしてまでオープンしたお店だったのに、閉めることになり本当に悔しかったです。

『ラーメン屋になるのが夢だった』と皆さんよく言いますが、大体の人がセカンドキャリアでラーメンを選んでいることが多いと思います。夢ならばセカンドキャリアではなく最初から目指すもの。

ですので、私は簡単にラーメン屋が夢だったとは言えません。でも、閉店は物凄く悔しかった」(篠塚さん)
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「サンジ」を閉店し、しばらくひきこもりの日々が続く。そんななか、家でアメリカのポートランドの飲食店やデンマーク・コペンハーゲンの「ノーマ」の映像を観て、何もない場所でも料理を作る「人」の魅力があれば素晴らしいお店を作ることができることを知る。

同じ頃、東京のカフェで「ただいま従業員は募集しておりません」という貼り紙を見て大変ショックを受ける。

ラーメン店はこんなに人が足りていないのに、カフェの求人には断らなければいけないほど応募が来ているのである。ラーメン店で働きたい人はなぜこんなに少ないんだろうと思った。

篠塚さんは小山の地で、東京の人たちを食べに来させられるお店を作ろうと決意する。

そうして、大行列店は産声をあげた

「YOKOKURA STOREHOUSE」のシックなロゴ(筆者撮影)

「YOKOKURA STOREHOUSE」のシックなロゴ(筆者撮影)


こうして、2019年「YOKOKURA STOREHOUSE」をオープン。

場所は小山市の横倉工業団地のど真ん中。工場の立ち並ぶ中、地域にあった外装、内装を模索し、インダストリアルな雰囲気のお店に仕上げた。地域や景観にあったお店作りを目指して作った。

「私はこの店では“従業員が働きたいと思える店作り”その一点にこだわりました。『こいつらと一緒に働きたい!』と思える店です。

ラーメンの味で業界を引っ張っている人はすでにいらっしゃいますし、手軽なお店で多くのお客さんを集めているラーメン店もたくさんあります。

その中で、自分にできることは何か、業界に何が残せるだろうと考えて、“働きたくなるラーメン店を作る”ということを目標にしました」(篠塚さん)

コーヒーのスタンドも併設。今までのラーメン店にはなかった光景だが、違和感がない。店主のセンスの良さを感じさせる空間になっている(筆者撮影)

コーヒーのスタンドも併設。今までのラーメン店にはなかった光景だが、違和感がない。店主のセンスの良さを感じさせる空間になっている(筆者撮影)


ラーメン店というとどうしても「修業」「独立」という言葉がついて回るが、ラーメン店で働くということにおいて選択肢はそれだけではない。このまま働き手がいなくなってはラーメンの歴史は止まってしまう。篠塚さんは「チームで働ける店」を目指した。

ラーメンだけでなく、店内にコーヒースタンドも作るなど新しい世界観を模索した。
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