
歴史あるフランス発のアルパインブランド「ミレー」。名だたる登山家たちが同社のアイテムを愛用するなど、その機能性の高さは折り紙付きである。
そんなミレーを代表するプロダクトのひとつが、今年でリリースから10年目となる高機能防水ウェア「ティフォン」。リリース当時の衝撃は色褪せず、蒸れにくいレインウェアというイメージを持つ方は少なくないだろう。
なぜティフォンは、類まれな高透湿性を備えるにいたったのか。そこには、全登山者に向けたモノづくりの姿勢があった。
【写真41点】「新作も登場!ローンチ10周年、『ミレー』の高機能防水ウェア“ティフォン”の誕生秘話」の詳細写真をチェック命を守る高透湿防水ウェアをユーザーへ

ティフォンが市場に初めて登場したのは、2016年。しかし、前年の2015年には既に前身といえる商品が登場していたことをご存じだろうか。
それは「W7 50000(ダブルセブン ゴマン)」(以下、ダブルセブン)と名付けられた防水ウェアだ。
商品名を見てもわかるとおり、このアイテムはティフォンと同じ50,000g/m²/24hという高透湿性をもってリリースされた。ティフォンの誕生は、このウェアの開発がきっかけだった。

今から遡ること十数年前、2009年7月に北海道大雪山系のトムラウシ山で、2012年5月には長野県北アルプスの白馬岳で複数の命が犠牲になるショッキングな山岳遭難が発生した。
死因はいずれも低体温症。これらの事故を境に、業界内では低体温症に対する危機意識が広がり、同時にアウターレイヤーの重要性もしきりに発信されるようになった。

ミレーの社内ではこの問題を解決すべく、これまでにない高い透湿性を持つ防水ウェアを作るプロジェクトが立ち上がった。
根底にあったのは、「すべての登山者が安全に山に登り、安全に家に帰ってこられる製品をユーザーに届ける」という、アウトドアギアメーカーの使命ともいうべき強い意志だった。

開発から数年の歳月を経て、ブランドの想いが結実したアイテムはついに完成。それが先に紹介したダブルセブンである。
そして発売翌年、名称も新たにアップデートされたモデルがティフォン(typhon=台風のフランス語表記)というわけだ。
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