大人がはけるキッズモデル。意表を突いた発想

アメリカやヨーロッパ発のデニムにも足を通してきた田中さんだが、その末に実感したのが日本メイドの素晴らしさである。

「いろんなデニムを試す中で、日本でこだわって作られたものって気が利いているな、面白いなと感じることが多かったんです。例えばこのクーキーズーというブランドの1本。某アメリカブランドのかなり古いキッズモデルがベースで、それを大人がはけるよう大きなサイジングにしているんです。
デザイナーさんが歴史や各国の特徴など、深い知識をお持ちだからこそ、こういうデニムを完璧に作ることができるんですよね」。

一般的に見ればクセは強め。ただ、田中さんはキッズモデルを大人仕様にする発想に膝を打ったという。
「古着店に置いてあるキッズのヴィンテージ服ってすごく可愛いんですよ。サイズは小さいけれどボタンやベルトループは大きくて、アンバランスさが魅力だなと。それが実際にはけるのですから、ちょっと夢みたいなアイテムですね」。


もちろん可愛さのみに惹かれたのではない。足を通すとわかる絶妙なシルエットもこの1本ならではだ。
「見てわかるようにシルエットは“ごんぶと”。子供服は動きやすさや脱ぎ着のしやすさが第一優先、それを拡大しているのでかなり太めになります。だけどウエストは意外にジャスト、歩きやすいし大胆さが前衛的にも感じられます」。

ポップな印象になりそうだが、はいてみるとどことなくモードな空気が漂う。懐かしさやコンセプトの面白さより、その「ファッションっぽさ」が田中さんには響いた。
デニムに合わせて作られた極太の専用ベルトもアイコニック。
「考え方がメゾン マルジェラにも近い。昔、人形用の服を大きくしたドールコレクションというシリーズがあったのですが、このデニムを見ていたら思い出しましたね」。
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