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2025.01.26

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「ラッパーは全員、秒殺される時代です」。般若が漫画『チ。』で感じたゾワゾワの正体



「地動説」という難解なテーマを扱いながら、“面白すぎる”として口コミで人気が爆発した異色の漫画『チ。―地球の運動について―』。

連載開始は2020年と比較的最近。作者は現在27歳、“若き天才”と呼ばれる魚豊氏。令和を代表する漫画に対し、般若の反応やいかに。

※以下『チ。』全8巻のネタバレあり。 
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「中世に生まれなくてよかった……」


『チ。―地球の運動について― 』(小学館 ビッグコミックス)原作・魚豊。『週刊ビッグコミックスピリッツ』に2020年9月から2022年4月まで掲載され、第26回手塚治虫文化賞のマンガ大賞を受賞。2024年10月5日からはNHK総合でアニメ放送中。27歳の作者は「知性と暴力」「善悪と功罪」といった人間社会の本質を突くテーマを選ぶことが多く、“若き天才”と呼ばれている。

『チ。―地球の運動について― 』(小学館 ビッグコミックス)原作・魚豊。『週刊ビッグコミックスピリッツ』に2020年9月から2022年4月まで掲載され、第26回手塚治虫文化賞のマンガ大賞を受賞。2024年10月5日からはNHK総合でアニメ放送中。27歳の作者は「知性と暴力」「善悪と功罪」といった人間社会の本質を突くテーマを選ぶことが多く、“若き天才”と呼ばれている。


『チ。』はアニメ化もしてますが、僕は漫画のほうで読みました。この作品……衝撃しかなくないですか? 登場人物のセリフも、パンチラインの応酬ですよね。

主人公っていう主人公はいなくて、巻が進むごとに時代が進んで、主人公も変わっていくというスタイル。

一貫しているのは、人の思いがずっと繋がってるっていうこと。天動説が信じられていた中世ヨーロッパを舞台に、地動説を研究したことで迫害された異端者たちの想いが、時を超えて受け継がれていきます。



でもまぁ、「マジで中世に生まれなくて良かった〜!」って感じですよ。

『チ。』の舞台は中世ヨーロッパで、C教という宗教が絶対的な正義なんです。背いた人間は異端者として容赦なく弾圧されるんだけど……もう1巻の2ページ目からいきなり拷問シーンですよ。



しかも、やり方が尋常じゃない。指の爪を剥がす、生きたまま火あぶりにする、口に鉄の器具を押し込む……。

冒頭から衝撃が大きすぎて、読み終わるまでずっとゾワゾワしてました。こいつら本当に同じ人間か?っていうヤツしかほぼ出てこない。

ちなみにタイトルの『チ。』っていうのは、「大地の地」「血液の血」「知性の知」のトリプルミーニングになっています。
2/5

「地動説」に魅了された12歳少年の名言




物語序盤の主人公はラファウ。12歳の神童ですね。彼は神学を学ぶため進学する予定だったんだけど、フベルトっていう異端者に出会ったことで「地動説」の美しさに魅了されます。

フベルトは異端者として捕まっていたのですが、ある日「改心しました」って嘘をついて釈放されて、ラファウを天体観測に誘う。結果、ラファウは地動説に魅了され、フベルトの残した研究資料を引き継ぎ、真理を追究する決意をするんですよね。

ラファウもその後、異端者であることがバレて捕まるんですけど、拷問の前に自殺しちゃうんですよ。自らワインに毒を盛って。
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異端審問官のノヴァクっていう、超重要な登場人物との最後のシーン。ここのラファウのセリフは印象に残ってますね。
ノヴァク これは“自殺”だぞ! 教えに反してる! ど、どこまでC教をコケにするんだ! 死の先に恐ろしい運命が待っているぞ―――

ラファウ 死の先なんか誰も知りませんよ。

ソクラテス曰く、「誰も死を味わってないのに誰もが最大の悪であるかのように決めつける」

エピクロス曰く、「我和のある所に死はない 死のある所に我々はない」

セネカ曰く、「生は適切に活用すれば十分に長い」

僕はその全てに賛成です。

ノヴァク すっ、全て二千年近くも前の異教徒の言葉だろ! 救世主が誕生する前の暗愚な連中だ! 奴等には絶対神も救いもない! そんな言葉がなんになる!

ラファウ 感動できる。

ノヴァク か……ん、

ラファウ フベルトさんは死んで消えた。でもあの人のくれた感動は今も消えない。多分、感動は寿命の長さより大切なものだと思う。――だからこの場は、僕の命にかえてでも、この感動を生き残らす。

ノヴァク ……し、正気じゃない。

ラファウ ?

ノヴァク 訳もわからん物に熱中して命すら投げる。そんな状態を“狂気”と言うとは思わないのか!?

ラファウ 確かに。

でもそんなものを、“愛”とも言えそうです。
3/5

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