⑤ ケンドリック・ラマー「スーパーボウル」のハーフタイムショーに任命
2025年2月9日開催予定のアメリカン・フットボール決勝戦「スーパーボウル」のハーフタイムショーで、パフォーマンスをするアーティストに任命されたケンドリック・ラマー。
ひとりのラッパーが任命されるのは史上初の快挙であり、HIPHOP史上最も盛大なドレイクとの戦いに圧勝し、トップに君臨したケンドリックが、アメリカで最も視聴されるスポーツイベント「スーパーボウル」のハーフタイムを任されるのは非常に大きな出来事なのだ。実はこのハーフタイムショーにはさまざまな問題が絡みあっている。
まず、スーパーボウルがリル・ウェイン(Lil Wayne)という大人気ベテランラッパーの地元であるニューオーリンズで開催されることから、「リル・ウェインが任命されるべきだった」という声と「ドレイクを負かせてトップラッパーになったばかりで今いちばん熱いケンドリックしかいない」という声とで賛否が生まれた。
はじめはウェイン自身もインタビューで「とても残念だ、俺はずっとスーパーボウルで演奏するのが夢だったんだ」などと悲しみを露わにし、その動画がバズるまでに発展。
実はこのハーフタイムショーのキャスティングをする会社は、上記のディディ問題でも名前が上がったJay-Zが上層部で関わっており、「Jay-Zが地元のウェインではなく、ケンドリックを選んだのは裏で取引があったからだ!」という声も上がり、Jay-Zに対する批判が増えるまでに発展した。
しかしウェインはその後一転し、「ケンドリックが選ばれたのは間違いないし、応援している」というような発言に変わったことで論争に終止符を打った。現在ではケンドリックの出演に文句を言う人は減り、基本的に応援する声に変わっている。

さらに大きく関わることがもうひとつある。ドレイクだ。実はケンドリックとのビーフでボコボコにされたドレイクは、自身も契約をしている大手音楽レーベル、UMG(ユニバーサル・ミュージック・グループ)に対して訴訟を起こしていたのである。
その内容はざっくり言えば、ケンドリックの大ヒット・ディス曲『Not Like Us』がドレイクに対する名誉棄損である訴えと、UMGが大手音楽配信サービスのSpotifyと連携し『Not Like Us』がより売れるためにボットなどを使用して人工的に数字を伸ばしたという訴えの計2件の訴訟を起こしていたのである。
リークしたドレイクはDMの中で、「若手のアーティストたちが今後大手レーベルに搾取されずにもっと売れるための訴訟だ」と発言していたが、HIPHOPファンからは「ケンドリックに対する負け惜しみだけでなく、スーパーボウルで『Not Like Us』を披露できないようにするのが動機だ!」という声が多数上がった。
実際、もし『Not Like Us』がドレイクに対する名誉棄損だと認められたら、ケンドリックがスーパーボウルで披露するのは難しくなるのだ。

しかし、確かにドレイクの目線から見ると、アメリカ人が最も視聴するスーパーボウルのハーフタイムショーで自身に対する悪口をラップする曲が披露されたらキツいものはある。
継続中であるこの問題に対しては、アメリカのHIPHOPファンの間でも賛否を生んでおり、ドレイクとUMGの戦いの行方も去ることながら、ケンドリックがハーフタイムショーで『Not Like Us』を披露するかどうかにも注目が集まっている。
「Not Like Us」の解説はこちら!以上が2025年でSGDがHIPHOP界で注目しているポイントである。HIPHOPに少しでも興味ある方はぜひ上記のことを意識しながら2025年を楽しんで頂きたい。