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海の生き物の多様性は、この世界の豊かさ

さて、改めて「来館者に見てほしい種は?」と聞くと、「やはりシロワニです」と答えた。

「当館で長く展示しているサメで、1999年に最初の4個体が南アフリカからやってました。

今もそのうち3個体がいまして、21年には国内初、世界で5施設目となる水槽内での繁殖に成功しました。来館いただければ、親子で泳ぐ姿を楽しんでもらえます」。

絶滅危惧種ともいわれるシロワニの国内生息エリアは小笠原諸島のみと非常に限定的だ。

海外では太平洋、大西洋、インド洋などの比較的暖かい海で生息しているというが、とはいえ海水浴や旅行で訪れた先の海で遭遇する機会はほぼないと言える。

「シロワニに限らず、水族館の魅力は陸上での暮らしでは出会えない多様な海の生き物を目にできるところにあります。

いくつも備え付けられている大きな水槽は自宅では所有できないスケールですし、魚好きでなくても楽しんでもらえるはず。

専用水槽で泳ぐマンボウに癒やされたり、肉眼で見ることのない深海の魚を目にして驚いたりと、何かしらの新たな発見や感動を持ち帰ってもらえるとうれしいですね」。

サメたちとの出会いをたっぷりと堪能したのちの帰路、ふと立ち寄った施設内に貼られていた1枚のポスターが目に入った。

それは県をPRする随分と前のものらしく、大きく「いばらきは、宇宙である。」というキャッチコピーが書かれていた。

なるほど。地表の約7割を占め、世界最高峰のエベレスト以上に深い海溝もある海はまさしく宇宙。そこに棲むサメも500種以上がいてわからないことばかり。

大洗では、それら未知なる世界の一端に触れられる、ということなのだ。


OCEANS2/3月合併「冬の街角パパラッチ」号から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック


PAK OK SUN(CUBE)=写真 小山内 隆=編集・文

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