「SEAWARD TRIP」とは……▶︎
すべての写真を見る 約60種ものサメを飼育しているアクアワールド茨城県大洗水族館。これほど多様な種類を一堂に集めた水族館は、世界的に見ても稀だ。
海の世界の頂点捕食者(トッププレデター)であるサメの魅力を、魚類展示課の吉川隼人さんに伺った。
多くの者を魅了する強者としての存在感
訪れたのは平日午後。それなのに館内は多くの人で賑わいを見せていた。
場所は茨城県・大洗町にあるアクアワールド茨城県大洗水族館。来場者が年間120万人を超える人気水族館で、大小60の水槽に暮らす約580種6万8000点の生き物たちとの出会いが楽しめる。
世界には500ほどの水族館があると言われるなか、国内には北海道・稚内から沖縄まで100カ所以上が存在する。日本人は魚をよく食べ、海と関係が深いからではないかという専門家の声もある日本は屈指の水族館大国なのだ。
どこも趣向を凝らした演出で来場者を楽しませ、それは太平洋に面して立地するアクアワールド茨城県大洗水族館も同様。茨城の海の豊かさを表す魚たちを集めていることを特徴のひとつとする。
「茨城の海は、千島列島に沿って南下する寒流の親潮と、九州と奄美大島の間のトカラ海峡から太平洋に入り、北上する暖流の黒潮とが出合う場所。暖かい海の魚、寒い海の魚がともに見られるのです」。
説明してくれたのは魚類展示課の吉川隼人さん。続けて、22年前のリニューアル時に、より明確なコンセプトを打ち出したのだと教えてくれた。その主人公がサメだ。
「潮目であることを背景に、サメも多様な種がやってくるんです。そこでリニューアルに際し『サメをメインにしたらどうだ』という声が上がりました。
当時から多くのサメが茨城近海で確認されていたことや、既にシロワニを飼育していたこともあり、他館との差別化を図る意味合いからも『サメを打ち出していこう』となりました」。
シロワニ
取材時(2024年11月)は56種を飼育し、49種250点が展示されていた。
鋭い歯や獰猛そうなルックスから“これぞシャーク”といった存在感を放つシロワニをはじめ、カナヅチのようなフォルムのアカシュモクザメ、立派なヒゲをたくわえたヒゲツノザメ、見た目がヤモリに似ているニホンヤモリザメ、エイのような平べったいカスザメ等々、スティーヴン・スピルバーグ監督の名画『ジョーズ』だけがサメではない!と言わんばかりのバラエティの豊かさなのである。
これほど多様なサメを一堂に集めた水族館は世界的にも稀少であり、約300万年前に絶滅した巨大ザメ、メガロドンの歯の化石標本も展示。大人を優に飲み込む大きさで、茨城で見つかったものなのだという。
メガロドンの歯の化石標本。
そして、これらサメたちが悠々と泳ぐ様子を目で追う来館者も、子供や大人、男性女性とさまざまだ。
「小さな男の子に人気と思われがちですが、けっこう大人のお客様も魅了されているんです。
強さの象徴であることや、フォルムから感じられる威風堂々とした姿だったり、やはりトッププレデターとしての存在感に惹きつけられるのでしょう」。
海の世界の頂点捕食者だからこその怖さもまた魅力なのだ。
2/3