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ブルーフラッグは地域課題を解決する手段

日本ブルーフラッグ協会 代表理事 片山清宏さん●1975年、神奈川県生まれ。湘南・鵠沼海岸の近くに生まれ育ち、大学卒業後の99年に厚木市役所入所。2010年、松下政経塾に入塾(第31期生)。13年、湘南ビジョン研究所を設立し、海の環境問題に取り組む。22年、日本ブルーフラッグ協会を設立。サーフィンキャリアは40年以上。学生時代には全日本学生サーフィン選手権で4位に入賞した経験を持つ。

日本ブルーフラッグ協会 代表理事 片山清宏さん●1975年、神奈川県生まれ。湘南・鵠沼海岸の近くに生まれ育ち、大学卒業後の99年に厚木市役所入所。2010年、松下政経塾に入塾(第31期生)。13年、湘南ビジョン研究所を設立し、海の環境問題に取り組む。22年、日本ブルーフラッグ協会を設立。サーフィンキャリアは40年以上。学生時代には全日本学生サーフィン選手権で4位に入賞した経験を持つ。


ブルーフラッグとは、国際NGOのFEE(国際環境教育基金)が実施する、ビーチ・マリーナ・観光船舶を対象とした世界で最も歴史ある国際環境認証だ。

認証基準を達成すると取得でき、毎年の審査を通じて、ビーチやマリーナ等の持続可能な発展を目指している。

1985年にフランスで誕生し、2024年5月時点で、51カ国の5121カ所が認証を取得。特にヨーロッパでの認知度は高く、ブルーフラッグビーチは「きれいで安全で誰もが楽しめる優しいビーチ」として広く認められ、バカンスシーズンになれば多くの人が足を運ぶ。

認証を得ていないビーチは「きれいではない」という認識が広まっているともいえるのだ。

実際、認証の取得には厳しい審査をクリアする必要がある。ビーチは4分野(水質、環境マネジメント、環境教育と情報、安全性とサービス)33項目、マリーナは6分野37項目、観光船舶は5分野51項目の認証基準があり、審査をパスすることで初めてブルーフラッグを掲げることができる。

日本では2016年に神奈川県の由比ガ浜海水浴場、福井県の若狭和田ビーチ(前ページ見開き写真)が初めて取得したのを皮切りに、現在では14カ所が取得している。

興味深いのは「認証の取得がゴールではない」とする点だ。ブルーフラッグはあくまで手段。「きれいで安全なビーチというお墨付きを活用して、どのように地域を活性させるのかが重要」なのだ。

「事例としてわかりやすいのは東北でしょう。近年、宮城県の気仙沼市や南三陸町、岩手県の陸前高田市で海水浴場を復活させる動きがあります。

東日本大震災によって堤防などのインフラが壊され、10年近く閉鎖されていたのですが、その間に海水浴文化はなくなり、海水浴客も減りました。対して海を含めた自然環境は素晴らしく、ブルーフラッグを取得して地域振興をしようという流れが生まれたのです。

海水浴場をうたえるのは夏の短い東北は1カ月ほどですが、ブルーフラッグビーチであることは通年うたえます。

そこで“誰もが楽しめるきれいで安全なビーチ”をコンセプトに、キャンプ場やサウナのような誘客装置を備え、季節を問わず海を楽しめる環境整備を行ってきました」。

ブルーフラッグビーチという旗印のもと、温泉などもともとあったコンテンツもつないでプロモーションを展開。人の行き来を生むことで地域のバリューを最大化し、一関など内陸の都市からの誘客を実現したという。

加えて環境省のネイチャーセンターがある南三陸町では教育機関等に対して環境教育旅行をセールス。地域の特性を活かした振興策で新たな関係人口を創出していった。

認証取得をきっかけにビーチの風紀を改善した事例もある。

「夏に100万人を超える人が来場する湘南の片瀬西浜・鵠沼海水浴場や神戸の須磨海水浴場は、かつて飲酒や喫煙、深夜まで鳴り響く音楽などを理由に苦情が増え、ビーチマナーや治安が悪化する事態となりました。

すると子供連れのファミリーたちを中心に人が離れていったんです。

そこで自治体や地域社会が働きかけ、ブルーフラッグの規定を活用してビーチでの飲酒を禁止し、喫煙所を設けるなど誰もが楽しめるビーチづくりを推進。離れた人たちをまた呼び込んでいきました」。

さらに人口1万人に満たない福井県高浜町にある若狭和田ビーチは、インバウンドを含めた観光振興、移住定住の促進による地域活性化に期待して認証を取得。

前出の由比ガ浜海水浴場は取得を通して市民・企業・行政の連携を生み、環境教育、環境保全、安全対策の取り組みを推進。なかでも県と連携したビーチのバリアフリー化は大きな成果とされた。

かようにブルーフラッグの活用法は異なる。地域それぞれが抱える問題を解決する手段となりうるのだ。


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