大阪・関西万博にも“海”にまつわるブースが⁉︎
井植 次の一大イベントとしては、大阪・関西万博があります。角南さんは万博でも万能っぷりを発揮なさっていますね。
角南 万博会場に、海をテーマにしたオーシャンパビリオン「ブルーオーシャン・ドーム」をつくります。建築は坂 茂さん、空間デザインは原 研哉さんで、体験に満ちた素晴らしい空間になる予定です。ぜひ子供たちにも遊びに来ていただきたいです。6カ月にわたる期間中ずっとイベントを催していきたく、企画を進めているところです。
井植 弊団体セイラーズフォーザシーも、10月の万博の最後の1週間に、このブルーオーシャン・ドームのプロデュースを手掛け、主催のゼリジャパンさんと共催させていただきます。角南さんは一般社団法人ブルーオーシャン・イニシアチブの理事も兼ねていらして大忙しですね。
ところで海藻も万博の注目トピックですよね。エネルギー源、CO2吸収源、さらに食料源にもなる海藻は、本当に万能かもしれないということで、今、世界中が海藻に注目し始めています。
角南 実は、海に生えている植物がCO2の吸収源として有望なんじゃないかという研究は前からあったのですが、私がこの財団に入った当時は誰も相手にしていませんでした。その頃、ある研究者と出会いまして、海のカーボンを、つまりブルーカーボン
※を、うちの財団の研究所でやろうじゃないかということになりました。
※沿岸・海洋生態系が光合成によりCO2を取り込み、その後海底や深海に蓄積される炭素のこと 角南 そうしていると、牛がCO2やCH4(メタン)を出しているという問題も出てきて、ベジタリアンやビーガンの人たちが海藻の良さに気付くなど認知も広がっていきました。これをきっかけに世界が日本の食文化における海藻の存在にも目を向け始めました。よく考えたら日本人は昔からずっと海苔などを食べていますからね。
大阪・関西万博の企画ができたとき、食に関しては絶対に海藻だと思いました。
井植 経産省による日本(政府)館には、頭にいろんな藻を生やしたキティちゃんが40体ほど展示されます。日本の政府は今、海藻推しです。超近未来の話になりますが、海藻養殖が世界を救うという文脈もあります。
角南 例えばアマゾンの森林がわかりやすいですが、陸域の場合は、カーボンクレジットなどの形でフットプリントからオフセットするまでの仕組みを作っています
※。同様にブルーカーボンは、藻を増やしていくことでカーボンクレジットをとります。それをお金で還元して、海洋保護の活動、あるいは町に対して普及していきます。
※カーボンフットプリント:製品の原料調達から、生産・廃棄までのライフサイクルにおけるCO2排出量を算定・分析することで、CO2排出量の削減活動を促すこと。 ※カーボンオフセット:算定したCO2排出量を、クレジット(排出権)の購入により相殺・削減すること。 ウニサミットでの一枚
井植 岩手の洋野町で、北三陸ファクトリーが開催したウニサミットが好例ですね。
角南 はい。洋野町は、日本でいちばんのブルーカーボンクレジットをつくっています。そして海藻をウニに食べさせることで、ウニがより太って美味しくなるというベネフィットを実現しました。ウニサミットに招待されて訪ねてみたら、すごく盛り上がっていました。今、ミシュラン星がついてるようなシェフたちも、こうした食材を使い、海の問題に一緒に向き合ってくれるようになってきました。
井植 本当ですね。今度はシェフたちにも話を伺ってみたいです。
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大阪・関西万博も来年に控えた今こそ、より一層海洋問題に目を向けなければならない。今、日本が世界に対し、海洋保全のリーダーシップを取ることが求められている。