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地域活性のキーフレームとなる「海業」



井植 個々の地域の活性も大事なポイントですよね。近年、注目すべきひとつのフレームワークとして、「海業」が出てきています。漁業以外の収入源を生み出し、それをもとに地域の経済活性化、街づくりを考えていこうとする動きです。

角南 我々財団も今、一所懸命に取り組んでいます。これまで海全体の環境問題、あるいは海運関連の話を多く重ねてきましたが、漁業というのは実はあまりやってこなかった。でも最近、井植さんを通して若い人たちの話を聞くうち、今の漁業を担う人やこれからの漁業を担っていく若い世代たちが、将来を非常に悲観してしまっているということを知りました。これは何とかしないといけない。

井植 海業をモデル化できたら、もっと若い世代の人たちの参入も増えそうです。角南さんが個人的にこれからやってみたいと思っていることはありますか? 

角南 船舶免許を取りたいですね。地元の大人たちは当たり前のように船に乗っているので、子供の頃は免許が必要だということを認識できていなかったのですが、今改めて、自分で海に出てみたいです。



井植 どこの海がいいですか?

角南 瀬戸内か、地中海か。なるべく揺れないところでしょうか。そういえば今、イタリアに水上飛行機を売り込んでいるところです。イタリアの海に浮かぶホテルに水上飛行機で行って、音楽を楽しみながらワインを飲んで、美味しい食事をするっていう、『紅の豚』のアニメで観たような世界観には憧れますよね。ただ、当のイタリア人はもうそのようなライフスタイルを忘れてしまっているんです。なので、これをもう一度思い出してもらいたいと思って頑張っています。

井植 夢があっていいですね。ここから先に目指すものは、Society 5.0の社会も見据えながら、地球、海、そして個人の心、そのすべてが豊かであることだなと、話を伺っていて改めて思いました。

角南 自然と向かい合う時間、空間の価値が、今とても高くなっていますね。今、瀬戸内デザイン会議にも関わっていまして、新たに取り組んでいるのが、人工の島をつくって、それをオフグリッドにして瀬戸内を航行させようというプロジェクトです。藤本壮介さんの設計で、ものすごいデザインになっています。

井植 面白そうですね。実現したらまたお話を聞かせてください。

※日本が目指すべき、デジタルが進んだ未来社会の姿


海を守るためには、いま自分ができることを着実に実行していくことが大切だ。例えば、角南さんと井植さんがいう、“今、食べた方がいい魚”などを積極的に食べることも、そのひとつだろう。

我々が慣れ親しんできた海。その素晴らしさを次世代の子供たちに紡いでいくのが、今を生きる我々の使命だ。

合六美和=取材・文、笹井タカマサ=写真

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