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――前編では発達障害を疑って受診する年齢層は20〜30代がいちばん多く、その次に中高年とおっしゃっていましたね。

太田 はい。2008年、当院で発達障害外来を始めた頃は、就職活動に困った若者たちがメインでした。ですが、人口のボリュームゾーンがこの10年で移り、今は中高年男性の夫婦関係の困り事が多くなってきています。

妻だけに焦点を当て「カサンドラ症候群」と言われがちですが、夫もまたコミュニケーションをうまく取りたいのにとれない、行き場所がないと困っているわけです。

――夫婦関係がうまくいかないことが発達障害によるものだった場合、どのような事例がありますか?

太田 男性の場合は、知的能力が高く、なんとか仕事は適応している人が多い印象です。特性がそこまで重くないので、職場では困難を抱えつつも仕事を続けられているけれど、情緒的交流が求められる夫婦関係となるとズレが大きくなってしまうんです。

そして、退職後や子供が巣立ったあとなど、妻と一緒にいる時間が増えるにつれ、そのズレが目立ってくるケースが多いです。



――コミュニケーションがうまくいかないというとASDのケースが多いのかなと思いますが、ADHD(注意欠如・多動症)のケースもありますか?

太田 ADHDの方も多いと思います。ADHDの場合は衝動性があるので、喧嘩が絶えないとか、感情的になってしまうとか、お金使いが荒いといったことで夫婦のトラブルに発展するケースはしばしばありますね。

このような形で中高年の夫婦関係の問題が最近のトレンドとして実感しているのですが、気をつけないといけないのは過剰診断です。

夫婦間の微妙な“すれ違い”が、どこまで発達障害によるものかを見極めるには丁寧な聞き取り調査が必要です。判断基準は、やはり小さい頃から特性があるかどうかということ。ひとりひとり時間をかけてヒヤリングすることが大切です。

――発達障害により夫婦間の困りごとを抱えた場合、どのような解決策があるのでしょうか?

太田 うちの病院では、発達障害の当事者に焦点を当てた集団プログラムを行っています。このプログラムを受けたいという方がここ最近、急増しています。

プログラムの内容は、同じような困り事を抱えている当事者が集まり、課題やその解決策について話し合うこと。これをピアサポートと呼びます。多くの当事者は社会や家庭で孤立しているため、この取り組みは困難の解決だけでなく、孤立感の解消にも役立ちます。

とはいえ、発達障害でなくても夫婦関係がうまくいかない人は山ほどいますから、それが発達障害によるものかどうか、まずは病院やクリニックに受診をすることをおすすめします。


カサンドラ症候群に関する書籍は多く出版されているので、妻側の苦悩だけがクローズアップされがちだが、夫もなぜ妻とうまくいかないのか悩んでいる人が多いのだ。

しかし、太田先生の言う通り、夫婦関係がうまくいかない=発達障害というわけではない。相性の問題で夫婦仲カウンセリングに通っているという人の話も聞いたことがある。

例えば、筆者はADHDの特性で優先順位をつけるのが難しく、部屋の片付けができない。部屋を片付けられないことから夫婦喧嘩に発展してしまわないよう夫は私の特性を理解し、片付けをする際は夫が手順を指示してくれて片付けられている。

夫婦間で問題が発生した場合、発達障害とそれ以外の原因も探りつつ、関係の修復を目指したいところだ。

姫野 桂=取材・文 佐藤ゆたか=写真

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