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依然として続くサウナブーム。
全国各地にサウナ施設が続々新規オープンしたり、サウナ室の蒸気をタオルで扇ぐ「熱波師」がカリスマ的人気を博したりしている。もはやブームは“終息”ではなく、“定着”のフェーズに入っているといえよう。
サウナが身近になった今だからこそ知っておきたい「正しいサ活」について、医師であり日本サウナ学会代表理事でもある加藤容崇先生に伺った。
話を聞いたのはこの人! 加藤容崇先生●日本サウナ学会代表理事。北海道大学医学部医学科を経て、同大学院で医学博士号取得。北海道大学医学部特任助教として勤務したのち渡米。ハーバード大学医学部附属病院腫瘍センターにて膵臓癌研究に従事。帰国後、慶應義塾大学医学部腫瘍センターや北斗病院など複数の病院に勤務。現在の専門は癌ゲノム(癌遺伝子検査)と癌の早期発見技術開発。著書に『医者が教えるサウナの教科書』『サウナ大全』(ダイヤモンド社)などがある。
「ととのう」=体の「バグ」が関係している?
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ーーサウナーが口を揃えて言う「ととのう」の正体はなんですか? サウナといってもただサウナ室に入って温まるだけで「ととのう」わけではありません。
「ととのう」ためには、サウナ→水風呂→外気浴(休憩)という基本サイクルを3セットほど繰り返すことが必要です。この一連の流れで自律神経が大いに刺激されるからです。
というのも、熱いサウナ室と冷たい水風呂で交感神経(緊張状態のときに働く)は優位になります。その流れで外気浴をすることで体は興奮状態から一転リラックスモード(副交感神経優位)に。こうした日常生活では味わえないような副交感神経優位の状態が「ととのう」と呼ばれるものだと思います。
しかも、交感神経が上昇したことによって分泌されたアドレナリンがまだ血中にある状態なのに、体はリラックスしているという「バグ」が発生している。こうした「バグ」もまた「ととのう」(意識が清明に晴れているのにリラックス状態)ためには必要なのです。
ーーどれぐらいサウナ室に入ったらいいのでしょう? 目安の時間を教えてください。 多くの方が誤解していますが、サウナ室の時計(多くは12分計や砂時計)を当てにしてはいけません。〇分がいい! といった指標はないからです。サウナ室のコンディションやその日のご自身の体調によって異なるので、サウナの「入室時間=〇分」と決めないほうがいいでしょう。
ーーでは、なにを基準にしたらいいのでしょうか? 心拍数です。心臓が早く動きすぎると体に負担がかかるので、軽い運動をしたときの心拍数を覚えておいて、同じぐらいになったら退室し、水風呂に移行しましょう。
ーー水温が一桁台の水風呂を「グルシン」というらしいですが、そんなに冷たい水風呂にはいって大丈夫なのでしょうか? shutterstock
「グルシン」がお好きな方もいますが、おすすめはしません。
人体は15℃以下の水風呂には「痛い」と感じる温度センサーが備わっています。痛覚が刺激されると血圧が上昇して体への負荷が急上昇してしまいます。ですので、ベストは16~18℃の水風呂。
適切な温度の水風呂に入ることで、体は魔法瓶のように熱を閉じ込め、ぽかぽか状態が続きます。ただ深部体温が下がるまで入ってしまうと爽快感が弱くなりますので、長くても1分程度にしておきましょう。気道がスース―してきたら出るタイミングです。
ーーサウナ室でのふるまいを教えてください。 階段状になっているサウナ室では、一段上がると温度も約10℃高くなるので、まずは下段から座りましょう。また、ヒーターの前は目が乾燥しますので、眼精疲労のある方は避けるべきです。
そして、基本姿勢はあぐらか体育座り。足を下す腰掛スタイルだと、全身の温まり方にムラが生じてしまいます。テレビがついているサウナ室もありますが、「ととのう」を最大化させるためにOFF。目を閉じ、呼吸はゆっくり息を吐く呼吸で副交感神経を高めましょう。
高温サウナの場合には大きく吸うと鼻の粘膜が傷んでしまう可能性があるので、タオルで顔を覆うと良いでしょう。
基本的には静かに過ごせばいいのですが、手持ち無沙汰で居心地が悪い場合は、周囲に迷惑にならない範囲で足の指の間に手の指を1本ずつはめてゆっくりまわしたり、肩まわしや頭皮を軽くマッサージするなど、サウナ時間を有効に使うのもありです。
ただし、皮膚を強く押すことはNG。皮膚を圧迫することで汗が出にくくなるので危険です。
ーーほかにNG行動があれば教えてください。 「飲み会後にサウナでアルコールを抜く」なんていう方もいますが、アルコール摂取後はNGです。そもそもサウナでアルコールは抜けませんし、脱水状態になりやすいだけです。また、自分の体の状況を適切に判断できないので、大きな負荷がかかっても自覚できないので危険です。
そして、満腹時も消化不良になりやすいので避けましょう。
もちろん、風邪のときもNG。「サウナの熱で風邪のウイルスをやっつける」と考えてしまうかもしれませんが、風邪を引いているときは、そもそも体内の体温計が高温に設定されているためサウナに入ると危険ですのでやめましょう。静かに寝ているのが良いですね。
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