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トラップ=罠。その歴史と元々の意味


現在日本を含め世界中で当たり前に聴こえてくるトラップというサブジャンル。実はビートの特徴だけでなく、元々「トラップ」にはさまざまな意味が含まれているのをご存じででしょうか? それを理解するにはまず歴史を説明する必要があります。

アメリカ南部の商業・経済的な都市、アトランタ。

アメリカ南部の商業・経済的な都市、アトランタ。


上記で述べたように、TR-808がかなり売れたアトランタは、黒人のコミュニティだけでなく、ドラッグがはびこる危険な地域が多いことでも知られています。もう少し遡ると、アメリカの奴隷制度からの影響で、逃げ切れなかった黒人たちを先祖に持つ家庭が多く、そのため貧しい黒人コミュニティが多く存在しています。

そんな貧しい地域で生きていくため、そして状況から抜け出すためにはドラッグの売人になる選択が手っ取り早かったのです。ただ、売人になっても逮捕されるか商売敵に殺害されるかの末路が多く、「売人になる→刑務所に入る→出所後にまともな職に付けず再び売人になる→また逮捕される」の連鎖が続く人が続出。いつの間にかそういう連鎖が続く地域のことをスラングで「トラップ」というようになりました。

トラップは直訳すると「罠」という意味なので、「ドラッグや貧困から抜け出せない罠のような地域と生活」という意味や、ドラッグの売買、またはドラッグを接種する行為などを「トラップ」と呼ぶようになったのです。



ちなみに廃墟になってしまった家も多く、ジャンキーが集まってドラッグをやる家のことを「トラップハウス」と呼んでましたし、そんな廃墟が多数存在すると想像しただけでどれだけ過酷かイメージができるかと思います。

トラップというサブジャンルは本来、ドラッグが蔓延る貧困の街という「罠」の中で生き抜くことを歌う、アトランタのアーティストが生み出したジャンルなのです。

当初はその地域に住んだこともなければ、そんな経験をしたことがないラッパーがトラップを使うのはリアルじゃなく、ダサいとされていました。現在ではどうなのか? もう少し歴史を見てきましょう。


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