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2024.11.23

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「ドラッグと貧困の“罠”の中で…」HIPHOPの“トラップ”、意外に知らない歴史をSGDが解説!

写真=shutterstock

写真=shutterstock

連載「HIPHOP Hooray feat.SGD」とは……

HIPHOPシーンやその歴史に精通するShotGunDandy(ショットガンダンディ)さん。

前回はP. ディディの逮捕騒動を解説してもらったが、今回はHIPHOPのジャンルのひとつ、“トラップ”についてその歴史とともに語ってもらおう。
案内人はこの方!
ショットガンダンディ(ShotGunDandy)●HIPHOP解説者。幼少期から沖縄で育ったマルチリンガルのアメリカ人。HIPHOPの深い知識を活かして楽曲の和訳やスラング、メッセージやリリックの意味などをYouTubeなどで解説し話題を呼んでいる。ビートサンプラーバトル「King of Flip 2023」ではベスト4入り。 Instagram:@shotgundandy X:@ShotGunDandymk3

ショットガンダンディ(ShotGunDandy)●HIPHOP解説者。幼少期から沖縄で育ったマルチリンガルのアメリカ人。HIPHOPの深い知識を活かして楽曲の和訳やスラング、メッセージやリリックの意味などをYouTubeなどで解説し話題を呼んでいる。ビートサンプラーバトル「King of Flip 2023」ではベスト4入り。 Instagram:@shotgundandy X:@ShotGunDandymk3

皆さんいかがお過ごしでしょうか? ShotGunDandy参上です!

今回は世界で最も主流になったHIPHOPのサブジャンルである「Trap(トラップ)」についてお話します。トラップとは何かについてももちろん説明しますが、トラップがもともとどういう音楽だったのか、その起源にも触れていこうと思います。
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HIPHOPの中で現在主流なのが「トラップ」

現代で最も世界的に聴かれている音楽ジャンルが何かわかりますか? そう、HIPHOPなのです。これは2017年に楽曲のセールスなどのデータを集めたニールセンによって「HIPHOPがRockを超えて最も聴かれているジャンルである」と正式に発表しました。

そんなHIPHOPにも「ブームバップ」や「ドリル」など、さまざまなサブジャンルが存在してますが、その中でも現在いちばん主流になのがトラップなのです。

特に20代〜30代の若い世代では「HIPHOP=トラップ」という感覚を持っている人が多いかもしれません。今、音楽配信サービスで「おすすめHIPHOP」的なプレイリストをクリックすると、高い確率でトラップ系の曲が流れることでしょう。

世界的に主流となっていることがわかる例として、いくつかアーティストを紹介します。まず今いちばんアメリカで売れっ子といっても過言ではないプロデューサーがメトロ・ブーミン(Metro Boomin)。2024年3月にフューチャー(Future)という人気ラッパーとのコラボアルバム「We Don’t Trust You」がリリースされたのでぜひお聴きください。

コラボアルバムの解説動画はこちら!



日本でのトラップはどうだったのか? 2010年頃から徐々に火が付き、Lil YukichiやKOHH、BAD HOPなどの功績によって一気にトラップの人気が爆発。現在では日本のHIPHOPシーンでもいちばん売れる主流のスタイルになっております。
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そもそもトラップとは何なのか?

まずはトラップの特徴的な音について説明します。

トラップでいちばん目立つ特徴として、ドラムのハイハットの音があります。普通は1小節の中でどんなに早くても8拍打つのが主流でしたが、トラップではとてつもなく早い3連符を打ちまくるという、現実では叩くことが出来ないハイハットが入っていることで知られています。

もうひとつの大きな特徴として、スピーカーが割れんばかりのうねるような太いベース音があります。特徴的なハイハット音やベース音、それ以外のパーカッションなどの音はほとんどの場合、日本が誇る音楽楽器メーカーであるRoland社による音楽業界のドラムマシン「TR-808」で奏でています。

これは私が足用しているサンプラー「MPC LIVE2」。

これは私が愛用しているサンプラー「MPC LIVE2」。


1980年代に発売されたドラムマシンは最初はエレクトロニックなどのジャンルに多用されていました。「TR-808」を世界で始めて使ったバンドが、今は亡き坂本龍一氏が所属していた「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」だと世界的にも知られています。
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発売当初はHIPHOP業界でも使うアーティストが多かったですが、音があまりにもデジタルっぽくて特徴的過ぎたという理由で人気が出ずに手放す人が多かったのです。その結果、大量にTR-808を抱えた中古楽器店が続出し、「駆け出しのプロデューサーが購入できる安価なビートマシーン」という印象を持たれ始めました。

売れなくなってしまったTR-808は、アメリカの中でも田舎っぽいイメージがある南側の地方に流れていき、その中でも都会であるジョージア州アトランタ市に多く集まったとされています。

アトランタには才能は溢れているがお金がない黒人たちが多く、TR-808はそんな人たちにとって手が出しやすいため、多くの駆け出しのアーティストの手に渡ったという歴史があります。
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